おまけ06 食いしん坊バトル!グルメアリーナ
──魂と味覚が火花を散らす、料理闘技場の頂点へ!──
◆舞台は「地下料理闘技場」◆
世界中の料理人が一堂に会し、“真の一皿”を決する戦い――
それが、年に一度開催される地下料理大会「グルメアリーナ」。
ルールは一つ。
“食べさせて勝て”。
使う食材、調理法、テーマは自由。審査するのは、かつて五大料理文明を創造したとされる
伝説の審査機械魔人。
鉄魔人《クック=ジャッジ・ゼロ》
「ワ・レ・ハ 真・ノ・味 判・定・機」
「オイシイ モノ ダケ 喰・ウ」
ナターシャは、招待状を握りしめながら言った。
「いいわよ、最強って言葉……嫌いじゃないわ!」
「久しぶりね、狼のお母さん」
そう言って現れたのは、黒い包帯をまとった目が黒い不気味な美女
ミイラ女の料理人、ミラ。
かつて異国でナターシャと料理バトルを繰り広げ、敗北した女。
その因縁を晴らすため、今回の大会で再戦を挑んできたのだった。
「今回は違うわ。あたしの“スパイス・ネクロシチュー”で、アンタの理性を呪い吹き飛ばしてやる」
「ふーん?でもうちの“子どもに優しいお母さん唐揚げ”は、どんな呪いも中和するわよ?」
観客たちは騒然。
「狼女VSミイラ女!? 胃袋じゃなくて情緒が壊れるだろ!」
◆三大料理テーマ対決!◆
今回のテーマは《和》《中華》《洋》の三連戦!
【第一戦:和】
ナターシャ:
・かぼちゃと鶏そぼろのあんかけ
・佐久鯉のおみそ汁(鯉こく)
・炊きたての白米で握った塩むすび
ミラ:
・棺桶寿司(シャリに棺桶型の海苔、埋葬ワサビ入り)
・煮込んだ黒豆の怨念煮
審査:
「……塩むすび、涙出る」
「黒豆は味が濃すぎて、後を引かない……」
→ ナターシャ勝利!
【第二戦:中華】
ナターシャ:
・フワトロ卵のカニカマ炒め(アレルギー対策済)
・きのこたっぷりの回鍋肉風
ミラ:
・サソリとトカゲの麻婆豆腐“怨鬼式”
・ラー油で揚げたミイラ春巻き
審査:
「……ピリ辛だけど、ナターシャのは安心して食べられる」
「ミイラ春巻きはカリカリだが……尻尾が出てる……」
→ ミラが僅差で勝利!
【最終戦:洋】
ここでミラは隠し球を出す!
「この“禁断のラザニア・ネクロディッシュ”で勝負よ!」
血のように赤いソースに包まれた重厚な層――
不気味に発光する謎のチーズ。
観客たちはその香りに頭がクラクラしはじめた……。
ナターシャは、静かに目を閉じる。
「最後は、双子のために作った愛の味でいく。
これが私の“お母さんの洋風ランチプレート”よ!」
・手作りハンバーグ(肉汁じゅわ)
・ポテトサラダはリンゴ入り
・ケチャップのオムライスには “フユ♡ナツ” の文字
◆決着!鉄魔人のジャッジ
審査ロボ《クック=ジャッジ・ゼロ》が起動!
「判・定・ス・ル……」
「ミ・イ・ラ・ヨリ……」
「オ・カ・ア・サ・ン ウ・マ・イ!!!」
\ドォォォォン!!!!/
鉄魔人、ナターシャに熱々の拍手!
\わあああああぁああああああ/ 観客大歓声
大会が終わり、熱狂のグルメアリーナが静けさを取り戻しはじめた頃。
ミラは包帯の隙間からのぞく瞳で、ナターシャを見つめていた。
「……ふん、今日は完敗よ。
でもね、ナターシャ。次の大会では、負けないから。
私、もっと美味しくなって戻ってくる」
ナターシャは笑ってうなずいた。
「楽しみにしてるわ。次も“お母さんの味”でいくから、覚悟しておきなさいよ?」
「……あんたの唐揚げ、反則なのよ。あれは……心臓に悪い」
ミラは小さく笑い、包帯をなびかせて背を向ける。
去っていくその背に、ナターシャが声をかけた。
「ねぇミラ、あなたにだって誰かの“お母さんの味”があったはずよ。
……いつか、それを思い出せたら……きっと、もっと強くなるわ」
ミラは振り返らずに手をひと振りして、ただ一言。
「言ってな。バカみたいに正しいおかあさん料理人さん」
そして、ミラは闇に溶けるように姿を消していった。
ナターシャは深く息を吸って、月を見上げた。
「……いいライバルね、まったく。でも……次も絶対、負けないわよ」
その瞬間、腹がグゥウ~~~~~~~~~~~ッッ!
お腹が鳴る音が、静かな夜にこだました。