おまけ05 伝説の鍋を探して
──味を守る「炎の鍋」と、孤独な魔物の物語──
ゼロ部隊本部。ナターシャの机に、謎の報告書が届いた。
「古代クレール王国に存在した“炎の鍋”」
「それは全ての“真の味”を引き出す、世界で唯一の調理器具」
「この鍋が壊されれば、料理の魂が失われるという――」
ナターシャの目が輝いた。
「……世界の味を守る鍋!? 行くしかないじゃない!」
すると背後から、黒いスーツにサングラスの男が現れた。
「情報部のナカムラです。例の鍋、敵国も狙ってる。同行します」
さらに窓から逆さまに天井から降りてきたのは――くノ一・楓。
「すでに私は現地入りしていた。遺跡への地図を持っている」
ナターシャは思った。
(なんで諜報部って毎回こうやって勝手に話が進んでるの!?)
三人は伝説の鍋を求め、古代遺跡「グラン・クレール宮」へ向かった。
遺跡には罠と謎が満載。食材を使って扉を開く“調理仕掛け”、
正確な味の再現で解除される“味覚パズル”、
そして途中にはナターシャと楓のガチ料理対決も勃発。
「私の手裏剣味噌汁、飲んでみな」
「私はママよ。母の味ってもんを教えてあげるわ」
ナカムラだけは真顔で言った。
「どっちの味も……良い。カロリーが高いだけだ」
そして、ついに三人は、最奥の大広間にたどり着く。
そこには、巨大な鉄の鍋を守る一体の影。
全身が鋳鉄でできたゴーレムのような存在。
その名も、《セト=サーヴ》調理と孤独の番人。
「この鍋は、真の味を知る者にしか渡さぬ。
……我は何百年も、この炎の味を誰とも分かち合えぬまま……ただ、待っていた」
ナターシャはその瞳に、料理を失った者の哀しみを見た。
ナターシャは鍋に手をかけ、言った。
「我が家の“お母さんの味”はこれよ。
うちの双子が泣いたあと、笑顔に戻る一番の料理。唐揚げ!」
――材料素材――
・カラッと揚がる魔界小麦粉
・引き締まった放し飼い地鶏のもも肉
・すりおろしニンニクとショウガ
・そして魔法農場産の熟成しょうゆとみりん
「鶏肉はしっかり味を染み込ませて、低温でじっくり一度揚げて、二度揚げでカリッカリ。
熱々のうちに、レモンは……かけない!素材で勝負!!」
セト=サーヴは訝しげに見つめながら、一口。
「……ザクッ」
咀嚼するたびに、ジュワッと溢れる肉汁と香ばしい衣。
そこには何の魔法も仕掛けもない。けれど、どこまでも温かくて、優しい味。
「これは……誰かが、誰かのために作った……味……」
鉄の瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちた。
「私、子どもたちが泣いた時、怒った時、戦いに傷ついた時、全部この唐揚げで癒してきたの。
今日も誰かを救えるなら、それでいいのよ」
セト=サーヴはうなずき、静かに言った。
「ありがとう。母の味を、もう一度知ることができた……」
セト=サーヴは微笑んだようにうなずいた。
「この鍋は、君たちの手に渡るべきだ。ただし……料理に嘘をつかないこと。
“心を込めて”作り続けること。それが、この鍋の唯一の契約」
こうしてナターシャたちは、伝説の鍋を手に入れた。
だが、ナカムラがぽつりと一言。
「これ……重いな。家にどうやって持って帰るんだ……」
巨大な鍋を背負いながら、ナターシャがつぶやく。
「大丈夫。鍋は、ママの手で運ぶのが一番いいのよ。だって、家族の味は、母が守るものだから!」
大家族すぎんか、ナカムラはツッコみたかったがやめた。
狼女ナターシャは伝説の鍋をGETしたが、自宅に置いてくおくと、場所をとりとても邪魔だったという。家には適度なサイズの調理器具がマッチするのであった。普通の鍋を使ってまーす。