おまけ04 潜入!美食国家マルクア王国
──王宮の料理 メモリー・シュプレームの謎を暴け!──
美食と芸術の都、マルクア王国。
世界中の舌の肥えた貴族たちが、人生最後の晩餐をここで迎えたがるほどの“味の王国”。
ナターシャの今回の任務は、その王国への極秘潜入だった。
「マルクアで、何かがおかしいのよ」
「料理で……人が操られてるという噂がある」
彼女は王国への使節団に料理人“ナタリィ”として偽装潜入。
母ではなく、スパイとしての顔を引き締め、銀の包丁を鞘に収めた。
ナターシャが潜入したのは、王宮内にある伝説の厨房
「レ・ソヴラン・キュイジーヌ(王たちの料理場)」。
大理石の床、宝石のような香辛料、火の精霊すら飼われているという贅沢さ。
しかし、その中に漂う香りに、ナターシャの嗅覚が反応した。
「……これは……ただのスープじゃない……」
王に供される“特別スープ”その名は《メモリー・シュプレーム(Mémoire Suprême)》。
黄金の器に注がれたそれは、一口で忘れられないほど美しく、恐ろしく、甘美な香りを放っていた。
(この味、思考を縛る)と噂されしスープ。
毒味役として選ばれたナターシャは、慎重にそのスープを一口啜った。
「……ぁ……」
五感が震えた。
旨味、甘味、微かな酸味、香草の爽やかさ、そして底に潜む……“ねばり”。
「……これ、香料に混ざってる……魔界産の記憶粘着香!
この味にドス恋!!(この味にドストライク!恋しました。)」
記憶と味覚を結びつけ、食べた者の“忠誠心”や“判断力”を操作する。
それが《メモリー・シュプレーム》の正体だった。違法薬物ギリギリ、ヤバすぎる。
◆香りで操る支配者◆
背後には、大臣エスカラ・ド・ブランシュの影があった。
「王に忠誠を誓わせる? 違うな。あれは、“味”に忠誠を誓ってるんだ」
「思考を奪い、心を縛る……食の支配だわ」
ナターシャは調味料倉庫を調査し、密かに“メモリウム”の瓶を発見。
その横には、香草に似せた乾燥粉末と、輸送記録の魔導石。
「これだけで証拠は十分……!」
エスカラ大臣が厨房に現れたとき、すでにナターシャの罠は張られていた。
「おまえの作るスープは絶品だったよ。だがもう、誰も飲まない」
「ふん、狼の女が何を知る。味覚は国を治める武器……!」
「違う。味覚は、人を幸せにする魔法よ。悪用すれば、ただの呪いになるわ──!」
ナターシャは鍋を逆さに叩き、“耳栓入り”大音量!鉄太鼓!!大臣へとぶつけた!!
(※意味不明だが強い)。
こうして、王宮料理に潜む陰謀は幕を閉じた。
数日後。玉座の間にて
王は深く頭を下げた。
「我が味覚を救ってくれた狼女よ。そなたには、王宮スイーツ詰め合わせと、特製ワイン、あとパンも……いっぱい差し上げよう」
「え、そんな……あっ、チョコ細工も……あっ……チーズ……有難うございます♡」
“味”で支配されかけた国を、
“味”で救った狼女スパイ・ナターシャ。
王の命を救い、陰謀を暴き、スイーツと土産をどっさり抱えて凱旋
だが帰還後、双子のフユが一言つぶやいた。
「お母さん、お腹が……まんまる……」
ナツがすかさずツッコミを入れる。
「これもう“お母さん狼”じゃなくて、“お母さんタヌキ”だよ!」
ナターシャは手に持ったバームクーヘンをぎゅっと握りしめて言った。
「……黙りなさい。これは“捜査で必要だった”肉よ!」
「お母さん、またそれ言ってる……」
「いいのよ、ママは!スパイも、お母さんも、食いしん坊も全部まとめてナターシャなんだから!」
その瞬間、腹がグゥウ~~~~~~~~~~~ッッ!
「……まだ入るのかよッ!」
ナツとフユの叫びが、満月の夜に響いた。