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【45万2千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
お母さん狼女 ナターシャの食いしん坊 ドス恋(この味にド・ストライク 恋しました!
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おまけ02 ドス恋!?ナターシャ、再婚危機

「君の瞳は、まるで焼きたてパンの表面みたいに、香ばしくて……ふわっとして……」


「……はい、終了。ごめんなさい、既婚者です。しかも人狼妻です」


ナターシャはスッと箸を置いて、目の前の男に笑顔で宣言した。

そこは王都カメリアの中央市場にある、木造の小さな食堂『テイスト・ウィンド』。

彼女はただ、昼飯を静かに楽しみたかっただけだったのに。


「いや、既婚とか関係ない!人とか狼とか関係ない!俺はナターシャさんの“食べ方”に惚れたんだ!」


「(食べ方?どこを見てたの……? ガルルルルッもぐもぐしてただけよ?)」


男の名前はクライヴ・ランフォード。


見た目はそこそこ整った中肉中背の商人風。

だが、ゼロ部隊の情報によれば「複数の国家に出入りする密売人」であり、

現在のナターシャの監視対象候補だった。


「(でもまさか、ナンパしてくるとは思わなかったけど……)」


ナターシャは自然に彼に気に入られたのを利用して、監視対象への接触を開始。

「色仕掛けではなく、胃袋仕掛けで情報を探る」


それが狼女流。


クライヴは毎日違う食堂で昼を取り、常に誰かと会話していた。だが、料理の注文内容が奇妙だった。


「ご飯の代わりに、焼き芋を2本。汁物は味噌じゃなくて塩水で」

「牛肉は苦手なんで、山羊肉と交換できます?」

「魚は煮るな、炙れ。皮はバリバリに、骨は残せ」


「(……どこの軍のサバイバル訓練よ……)」


ナターシャは不審に思いながらも、彼と数回デートして同席して情報を集めた。


ある日、クライヴが向かったのは町外れの古い小屋。

そこは普通の人間がまず入らない、煙がもくもくと上がる“野営料理専門店”だった。

ナターシャも獣人姿に戻ってこっそり潜入する。


中は獣人や傭兵たちが集う地下食堂のような雰囲気。

壁には肉の塊がぶら下がり、天井からはハーブが逆さに吊るされていた。


「焼きキングトーンの丸焼き、トリュフ塩と青リンゴソース添え」

「フェニックス焼鳥の炭火焼、ヤギ乳バターソテーとラベンダー風味のクスクス」


ナターシャは一瞬、目を見開いた。


「(……やだ……うっまそう……!!)」


そして一口──


「ガルルルルッ……!!」


皮はパリッと、肉はジューシィ、香草が鼻を抜けて、微かに甘いソースが全体を包み込む。


「……こんな旨い物が……この世に……!この味にドス恋!(意味 この味にド・ストライク 恋しました。)」


興奮で耳がぴょこんと立ち、尻尾がフワッと持ち上がった。


クライヴの正体


数日後、ナターシャは彼がこの料理店を通じて、各地の傭兵や流れ者に極秘で「食糧支援」と情報取引をしていることを突き止めた。


しかも、ただの密売人ではなく、ある小国の王位奪還を狙うレジスタンスの“影のリーダーだったのだ。


彼の目的は「王国を貴族の支配から解放し、民の手に返すこと」。

そしてその戦いの準備を、食で繋いでいた。


ナターシャは最後、彼と市場で再び出会った。

彼は言う。


「……俺はあんたと一緒に、“本当の国”を作ってみたかった。……だが、わかってる。“お母さん”の目だった。俺じゃ敵わないって」


ナターシャはふっと笑った。


「……ごめんね。私、もう“命をあげる相手”は決めてるの。今は、双子とアルベルトと。あと、グルメ」


「もう、君に会うことはないかもな。」


彼は肩をすくめて立ち去っていった。


そして彼は民兵のレジスタンスとして貴族と戦い小国で死んだと、風の便りでナターシャは聞いた。


挿絵(By みてみん)

獣モードのナターシャ

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