エピローグ 葬送のマーリン 未来を繋ぐ者たち
あのサキュバスが空へと爆発してから、実に60年の歳月が流れた。
かつて伝説を築いた勇者アルベルトは、今
静かに、棺の中で、まるで眠るようにその生涯を終えていた。
その表情は、すべてをやり切った者にしか出せない、安らぎに満ちていた。
その葬送を取り仕切るのは、今は“黒と白の賢者”と呼ばれる魔導士、サーテンリ。
彼女の傍らに立つのは、長年アルベルトを見守り続けた黒魔術師、マーリンだった。
マーリンはぽつりと語り始めた。
「これがね……この世で最も子孫を残した男、勇者アルベルトの物語よ」
サーテンリは目を細めて、棺の顔を見つめる。
「マーリン師匠様……それにしても、本当に穏やかなお顔をしておられますね」
「そりゃあ、好きなだけハーレムやって、世界救って、愛されて、モテて、モテて、モテて、死んだんだもの。
そんな顔にもなるわよ」
「……勇者様を愛した10人の女性たちも、きっと幸せになったんでしょうか」
「さあね。でも、あの人たちの子供たちは世界中で活躍してるんだから……
多分、幸せだったんじゃない?子だくさんは平和の証よ」
「私も……父と母には本当に感謝しています」
マーリンはふっと笑って、弟子の名を改めて呼ぶ。
「サーテンリ。あんたの名前、“確実”って意味だったわよね。
リスクとシスターマリアが、“確実に平和な未来が来るように”って願って付けた名前」
「はい。私も、その名に恥じない生き方をしたいと思っています」
「ふふ。もうしてるわよ。
黒魔術も白魔術も極めたこの世でたった一人の“完全なる賢者”だもの」
「それは、師匠の教えが素晴らしかったからです」
「……謙遜なんてできるようになって。立派になったわねぇ、ほんと。
でもね、才能がなきゃ教えてもここまでにはならないのよ。わかってるでしょ?」
サーテンリは黙って微笑み、頷く。
やがて彼女は優しく言った。
「マーリン師匠様、そろそろ棺を運びましょう」
マーリンはそっと立ち上がると、しみじみと呟いた。
「……私も、誰かと結婚したかったなぁ。
ハーレムとまでは言わないけど、せめて結婚式ぐらいは……」
「師匠、声に出てますよ」
「うるさいっ。さっさと行くわよっ」
ふたりは笑いながら、勇者の棺を支え、ゆっくりと歩き出す。
その背中は、確かに未来へと続いていた。
勇者アルベルトの伝説は、ここでひとつの幕を下ろす。
けれど、マーリンとサーテンリ
彼女たちの“世直しの旅”は、これから始まるのだ。
その話はいずれ、またいつか、どこかで。
『世界を救った勇者アルベルト 夢の魔法を使ってハーレム性活始めました。伝説のサキュバス待ってろよ!』(真面目な恋愛小説)
――END――
葬送のフリー〇ンさんをオマージュしてラストを書きました。皆さん最後まで読んでいただき有難うございました。
現在『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』を書いてます。こちらも宜しくお願い致します。