第三話 白馬を連れてこい!? 勇者アルベルトの試練
時は魔界、広大な荒野をひとり駆ける勇者アルベルト。
その表情は険しく、胸には一つの使命があった。
「……白馬を……白馬を見つけねば……ッ!」
風が吹きすさぶ中、アルベルトは魔ロバに別れを告げ、旅に出ていた。
「白馬じゃなきゃイヤ~~って駄々こねる姫を口説き落とすには、もう……白馬しかない!!」
手がかりは、魔界北部にあるという「幻の白馬が住む谷」。
だがその場所は、どの地図にも書かれていない。
噂だけを頼りに、彼は魔界じゅうの馬と名の付く生き物を訪ね歩いていた。
◆魔界の泥沼牧場
「おっ、あれは……白い……!?」
ズブッと泥の中から出てきたのは、泥で白く見えていただけのドロ馬。
「うわぁ……匂いが……魔界の牛乳の比じゃないな……」
失敗。
◆霧の森の動物商人
「お兄さん、白いヤツ探してるの? これなんてどうだい?」
出されたのは、耳にリボンをつけた白いポニー。
「かわいいけど……姫に“これ違う”って即言われる未来が見える……」
丁重にお断り。
◆魔界アイドル牧場(?)
「白馬をご所望か!? 見せてやろう、我らがトップホースを!」
ひづめにスパンコール、たてがみにカラースプレー。
“白馬48”センター、リーダー・ユメミちゃん(8歳)が登場。
「アイドル枠すぎるッ!!!」
全力で逃げるアルベルト。
そして三日三晩、眠らず歩いたその先。
◆氷の山脈・幻の谷
銀色の光が差し込むその谷に、静かにたたずんでいたのは
まるで夢から出てきたような、真っ白なたてがみの馬。
「……いたぞ……正真正銘の本物の白馬……!」
アルベルトはそっと手を伸ばし、白馬のたてがみに触れる。
「頼む……一緒に来てくれ……あの子を迎えに行くんだ」
すると白馬が、ほんの少しだけ頭を下げた。
それは、頷きだった。
◆魔王城・ベルモットの部屋前
ベッドに寝転がり、抱き枕にされたバクちゃんが、ため息をついている。
「またどうせ失敗して帰ってきますよ……きっと……」
そこへ、パカラッ……パカラッ……
廊下の奥から、確かに聞こえる蹄の音。
バクちゃんが目を丸くする。
ベッドの上でうす目を開けたベルモットが、耳をぴくりと動かす。
「……この音……まさか……」
扉が静かに開かれ、逆光の中、銀のたてがみをなびかせた白馬が優雅に現れる。
その背に乗っていたのは、泥と汗まみれでボロボロになったアルベルト。
「迎えに来たぞ、眠り姫……君の“白馬の王子様”だ!」
ベルモットの頬がほんのり赤くなり
「……ん……ちょっとかっこいいかも……Zzz」
結局寝た。
その横で
「結局寝るんかーい!!!」
さっちゃんのツッコミが、魔界の空にこだました。