第二話 敵の喫茶店潜入!プリンと罠と猫耳と
東区の裏路地。ひっそりと佇むレトロな喫茶店の看板には、でかでかとこう書いてあった。
「喫茶 キャッツ・アイーン」
「……そのまんまかよ」
アルベルトがため息をつく。
「でも見てください、勇者さん!おいしそうなプリンの写真が貼ってありますよ!」
楓がプリンの張り紙に食いつく。
「あとでだ」
「えー!」
そんなやり取りをしつつ、三人は店内へと足を踏み入れる。
カランカラン♪(ドアベル)
中はほのぼのとした猫カフェ風。
おしゃれな内装。壁には猫耳つきの制服を着た店員たちの写真。
明らかにアヤシイ空気が流れていた。
「いらっしゃいませ〜。本日は…ご予約ですかぁ?」
奥から出てきたのは、グレーの猫耳に金色の目、艶っぽい笑顔の女性
長女・ズルイであった。
「……女体像の件で来た」
アルベルトが一言。
ズルイはニッコリと笑った。
「女体像? なんのことかしら~。うち、プリン屋さんなんですぅ♪」
完全にすっとぼけている。
プロの演技である。プロの犯罪者の方の。
その時。
「う、姉さま~~っ、あわわわ! ね、ねえ!あのくノ一!昨日やっつけたくノ一じゃない!? にゃにゃにゃにゃにゃ!!」
厨房から飛び出してきたのは次女・太目。完全にテンパっていた。
「なに言ってるのよ、太目っ!」
ズルイが小声で肘鉄を入れるが、太目はさらにヒートアップ。
「うわあああっ、盗んだ像が冷蔵庫に入ってるのバレちゃった?あっ!!」
ドカーン!
言ってはいけないことを言いかけて盛大に転ぶ太目。
そして、その横で緊張のあまりカタカタ震えていた三女・アイーン。
「ひぃ……警察の人……来た……逮捕……しょ、署までご同行くださ……あ、あぁ……っ」
パタンッ。
アイーン、緊張しすぎて失神。
「お、おい!?ちょっ、アイーンしっかり!!しっかりしてにゃーーーっ!!」
太目がゆすっているが、アイーンは白目をむいてピクリとも動かない。
ズルイは冷や汗を浮かべながら笑顔で両手を広げた。
「……あはは。えっとぉ、プリンいかがですか?当店自慢の“女体像プリン”とか……あります」
「おい女体像って名前!!!」楓とアルベルトが同時にツッコむ。
「とっとと吐け。どこに隠した」
アルベルトが手を腰の剣にかけると、ズルイの猫耳がピクッと動いた。
「くっ、しょうがないわね……!」
ズルイがバチッと指を鳴らすと、店内の壁がガラガラと開き、隠し通路が現れる。
「行くよ太目!アイーンは担いで!第二形態で逃げるわよっ!!」
「にゃはーっ!!」
「ひぃぃ……ねむい……重い……」
(担がれるアイーン)
「逃がすかよ!」
アルベルトが突進!
「待ってー!まだプリン食べてないー!」
楓も跳ぶ!
「ねこちゃん、 まってー!」
さっちゃんだけ目的が違う!
こうして、盗まれた女体像をめぐる追跡劇はさらに加速するのであった!