第一話 猫族の盗賊団
静まり返った深夜の大エイド。月明かりに照らされた商人の豪邸の中庭。
そこには、一際異彩を放つ“女体像”が鎮座していた。見るからに高そう。そして、妙にセクシーなポーズ。
その前に立ちはだかるのは
「ふふん。彫刻の番なら任せなさい。わたし、凄腕のくノ一なのよ!」
くノ一・楓、ドヤ顔。腰には手裏剣、目には自信、頭には少し油断。
その瞬間。
「ニャッハー!」
「どーも失礼しますにゃっ!」
「おっぱい彫刻いただきまーす!」
ドタン! バタン! キューーー!
楓の目の前が真っ暗になるのに、5秒もかからなかった。
翌朝。
「……という訳なんですよぉおおおおぉおぉお!!!」
庭に正座し、号泣する楓。
目の前には、呆れ顔の勇者アルベルト。肩にちょこんと乗ってるのは、ベビーサタンのさっちゃん。口元にはチョコバナナ。
「泣くな。女体像は取り返す。だが条件がある。俺のゼロ部隊に入ることだ。」
「はいぃ!行きますとも!一緒に女体像を猫族の盗賊団から取り戻してくださいぃぃ!」
アルベルトはうなずくと、さっちゃんに一言。
「いつものナカムラを呼べ」
「へーい、ナカムラ召喚~」
ぼわんっ!
どこからともなくスーツ姿の諜報部員・ナカムラが現れる。やたら目元がキリッとしている。どこか疲れている。
「今回の相手は……猫族の三姉妹です。通称『キャッツ・アイーン』。長女・ズルイ、次女・太目、三女・アイーン。現在、大エイド東区の喫茶店『キャッツ・アイーン』に潜伏中。」
「店の名前まんまじゃねーか……」
アルベルトのツッコミが入るも、ナカムラは無表情でメモを差し出す。
「こちら、店の位置。あと、プリンが美味しいです」
「情報よりスイーツ推し強くない!?」
「……私のおすすめは“濃厚モフモフミルクプリン”です。以上。」
情報提供を終えると、ナカムラはさっそうと、無言で去っていった。煙のように。
楓はきゅっと拳を握りしめ、涙を拭って立ち上がった。
「キャッツ・アイーン……絶対に許さない。女体像も、私のくノ一としてのプライドも、ぜーんぶ取り返してやるんだからぁっ!」
「じゃあ出発だ。キャッツ・アイーン、叩き潰す。」
「わーい!猫ちゃんに会えるー!」
(↑さっちゃんだけワクワクしている)
こうして、勇者アルベルト、くノ一の楓、ベビーサタンさっちゃん、諜報部ナカムラによる、
“女体像を奪還作戦”が始まった!




