第四話 ゼロ部隊に行く?行かない? サボりは誰にも止められない
――屋敷の裏庭。タバコの煙がふわりと夕空に消えていく。
「……ふぅ。戦場もクソだったが、メイド業も大概クソだな」
ため息をつくダリの元へ、勇者アルベルトとさっちゃんがやってくる。
「いたいた。そろそろ決めてくれ、ダリ。ゼロ部隊に――来ないか?」
「は?なんでアタシがそんなバ火力集団に? 無理無理無理、ぜってー無理。マジで無理」
「でも、行きたそうな顔してる」
「してねぇし!!!てか見んな!!!てか、あんたら何?ストーカーかなんか!?」
「ダリ、ツンデレが過ぎるぞ」
「ツンデレちゃうわ!!!!ツンや!純ツンや!!」
「いや、照れてるやん。100%照れてるやん」
さっちゃんが鋭く指をさす。
「うるせぇ!!!」
ダリは真っ赤な顔でタバコを吹かす。
「でも……あのお嬢の笑顔見て、アタシ……少しはマシだったのかもって思った」
ぽつりとこぼしたその言葉に、アルベルトは頷いた。
「クラリスの遺志を継いだお前だから、戦える。俺はそう思ってる」
「……アタシは別に、正義の味方でもなけりゃ、英雄でもない。
ただのサボり癖の元スナイパー、白き死の女神って呼ばれてただけで――」
「充分すごいじゃん……!」
さっちゃんが感動した声を漏らす。
「でもさ。仲間ってのは、サボってても、喧嘩してても、一緒にいられるもんだろ?」
「……勇者、アンタさ、時々すげぇこと言うな」
「時々だけかい!」
「うるせぇ!!でも……まぁ、行ってやってもええよ。ちょびっとだけ、アンタらの顔立ててやるわ。感謝しなよね、べっ、別にアンタらのために行くんちゃうし……!!」
「ツンデレ出たーーーー!!!」
「もう満点やん!天丼やん!3段活用やん!!」
さっちゃんが全力でツッコむ。
その夜、ダリは荷物をまとめながら、クラリスのペンダントを手に取った。
「……これからも、アタシはアタシなりにやる。サボるけど。めっちゃサボるけど」
だが、彼女の背筋は少しだけ伸びていた。
朝、出発の時。
「で、結局行くの?行かないの?行くの?」
「うっせぇ!……行くに決まってんだろがよ!!」
「言ったーーー!!!」
「でも途中で逃げても知らんで!?朝礼とかマジ苦手やし、鬼長官とか出てきたら即帰るからな!」
「自由すぎんか!?」
こうして
ダリ・メンドウががゼロ部隊正式入隊(仮)となった。
誰にも止められない、ツンデレ・サボり屋メイドの冒険が、今始まる!