第一話 夢の永遠の命 不老不死さぁ、欲しいでしょう。
爆発音。
――ドッカァァァン!!――
「うわっちゃああああああ! またやってもうたがなあああ!!」
その声とともに、研究室の壁がボロボロに崩れ、棚が1ミリも躊躇なく倒れ、天井から謎の液体がポタポタと落ちてくる。
そこは錬金術研究所であるはずだが、その実態は――ゴミ屋敷ラボと呼ぶのがふさわしかった。
床一面には空のレッドブル缶、謎の黒こげたスライム、破れた魔道書の切れ端、使用済みのフラスコ、床に貼りついたガムテープ、パンクしたロデムのぬいぐるみ……そして焦げ臭いカップラーメンの容器がうず高く積まれていた。
「どこにフラスコ置いたっけ……あ、これちゃうわ、ペヤングの器やった……」
ガチャッと音を立てて冷蔵庫を開けると、中からミイラのように干からびたコンビニ弁当が登場。しかも賞味期限は「魔暦375年」などと書かれている。
「ぎゃー!冷蔵庫っていつからタイムカプセルになってんねん……!」
研究室の片隅では謎の生物がうごめいている。
「ボク、ハ ガス ヲ スイマス……」とつぶやくアメーバ状のものがフラスコから勝手に這い出ていた。
棚という棚は崩れ、壁には
「次こそ金になる!」「不老不死こそギャルの華道!」
という自作の張り紙がびっしり。
ホワイトボードには「火薬 × 水銀 × 乳酸菌 = ???」というヤバすぎる数式が躍っていた。
そんなカオスの中心に立つのが、天パ+ガングロ+ミニスカ白衣のギャル錬金術師
マッド錬金術師 カゲツ・ナンバ
「ふふふ……せやせや……水銀を熱するとやなぁ……金みたいな色になるんや……ほんまの金ちゃうけどなぁ……!」
爆発と叫びの中、勇者アルベルトがノックもせずドアを開けてしまう。
「失礼しま――」
「キャァァァ! 爆発の余波やばばばいってばよッ!!」
もくもくと立ち上る煙。アルベルトは軽くむせながら、目の前の惨状に硬直する。
「ここ……本当に研究室、ですよね?」
「なに失礼なこと言うてんねん! ここは**乙女の聖域**やで!?
たとえGが3匹同時にダンスしとっても、これもまた芸術っちゅうもんや!!」
(……いや普通にゴミ屋敷だこれ)
それでもアルベルトは真面目な顔で口を開いた。
「あなたの研究、非常に興味深い。ぜひ我々ゼロ部隊へ――」
「アッカーン!!アタイはいま、不老不死の研究で忙しすぎて頭が回転寿司や!
寝とられへん、飯食われへん、ゴミ捨てられへん!
せやけどアタイ、ギャルとして不老不死の道を追うてんの!
だってさあ、老化ってマジ肌荒れじゃね!?」
(……何を言ってるんだこの人は)
「よし……じゃあその研究が成功したら、ゼロ部隊に来てくれ」
「えっ、なにその口説き文句……
ちょっとキュンやんけ、ズッキュンやんけ。
……しゃーないなあ、成功したら考えたるわ!でもな?」
と、カゲツは振り返って、山積みのカップ麺の山に腰掛けながら言った。
「掃除したら研究負けやと思ってるタイプやから。そこ覚悟しときや!」
そして研究室のどこからか、再びボン!と軽く爆発音が響いた。
アルベルトは白目をむきながら、思わず関西弁になりかけた。
「こ、こりゃあ……ほんまに……とんでもないギャルやで……」
めちゃくちゃ好きやっちゅうねん。月曜日も日曜日も~♪