第四話 天界査察官登場!バイセルとセクシャルに天罰!?
ある晴れた午後。バイセルがバナナの皮で転び、セクシャルがクレープを顔面キャッチした直後――
空が割れた。
雷鳴と共に現れたのは…
天界査察官・ダークエゼル。
「清き福音・バイセルおよびセクシャル。天界よりの査察に参上した」
黒い法衣に身を包み、金色の巻物を手に持ったその男は、背後に煌々と天界を宿していた。
「きゃあ! なんかすごい人来た!」
「……見た目、完全に闇堕ち系なんだけど」
バイセルとセクシャルはひそひそ声でパニック。
アルベルトもさっちゃんも姿勢を正す。
「(ヤバい…天界査察官って、天界内でも“天使を罰する天使”だぞ…)」
ダークエゼルは一歩踏み出すと、冷静に巻物を開いた。
「地上任務開始から三週間。
・詐欺現場で転倒五回
・善意の募金活動で“お釣りがない”と揉めて警察沙汰
・猫を助けようとして逆に追いかけられ逃走中に自販機破壊
この成績で、復帰希望と申すか」
バイセル「ぴええ…」
セクシャル「でも、でもっ、詐欺グループは潰したもん…!♡♡」
そんな中、さっちゃんがバチバチとラップトップを叩きながら割って入る。
「はいはい、こちら人間界側のサポート担当・ベビーサタンですけど~?彼女たちの善行記録、私が全部整理して提出済みですよ。
数こそ少ないけど、“自己犠牲度”は高水準。少なくとも最近の天使どもよりよっぽど善良かと」
ダークエゼル「……自己犠牲度。確かに、それは確認している。だが“実行力”が著しく不足している」
アルベルト「(わかる…それはわかる…)」
セクシャル「がーん」
そこでエゼルは巻物を閉じて、告げる。
「天界より最終通告。バイセル、セクシャル、および彼女らの保護者代理アルベルト。君たちを《ゼロ部隊》地上善行特別任務小隊に編入とする」
「ゼロ部隊!?」
と三人が驚く。
さっちゃんが解説する。
「つまり…“善行ポイントゼロからのスタート”ってことよ。要は“再教育扱い”。最下層のボランティア系天使部隊ってわけ」
バイセル「でも…ゼロでも! そこから始められるなら…っ!」
セクシャル「うんっ! 私たち、もっとがんばる!」
エゼルは彼女たちをしばし見つめると、小さくため息をつきつつも言った。
「……その“失敗を恥じぬ素直さ”だけは、評価しておく」
一筋の光が走り、ダークエゼルは天界へ帰っていった。
夕暮れの屋上にて。
バイセルとセクシャルは「明日からまた頑張ろう!」と前向きに話していた。
そんな2人を、遠くからアルベルトとさっちゃんが見つめていた。
「……さっちゃん、本当にこいつらで大丈夫かな…?」
「知らないわよ。でも少なくともこっちが先に根をあげなきゃ負けね」
「ハァ……やれやれ、俺の修行はまだまだ続きそうだ」
アルベルトはため息をついた。そして、次なる善行の鐘が鳴る。
ドジっ子天使シスター 、 バイセルとセクシャルがゼロ部隊へと編入された。
スカウトをやっぱなしはなし?
勇者アルベルトの苦労は終わらない。