第2話 最初の町へ
勇者アルベルトの物資補給係として旅に出た俺。だがリスクの最初の試練として立ちはだかったのは、スライムだった。
名前 : スライム
体力 : 5
攻撃 : 3
防御 : 2
素早さ:3
この世界で一番弱いゼリーみたいなモンスター
「くそっ……! なんでこんなに倒れないんだよ!」
目の前のスライムは、勇者アルベルトなら剣で一撃で倒せるほどの弱い魔物。それなのに、俺は何度も拳を振るわなければ倒せない。俺の攻撃は軽く、スライムの弾力に吸収されてしまう。しかも、相手の攻撃は運がいいおかげで時々避けられるものの、当たると確実に体力を削られていく。
「や、やばい……本当に死ぬ……!」
あっしんだ
最後の一撃を受け、俺の意識は闇に沈んだ。
「おー、死んでしまうとは情けない!」
その声で目が覚めると、俺は王宮にいた。王様は苦笑しながら、俺に木の剣と木の盾を渡した。
「リスクよ、お前の役割はただの荷物運びではない。勇者が戦いに専念できるよう、万全の準備を整えることこそが重要なのだ。だが、いざという時のために最低限の武器は持っておけ。」
「……そ、そうなんですね。」
王様の言葉を聞き、俺は少しだけ納得した。物資補給係だからといって、安全な役職ではない。
時には自分の身は自分で守らなければならないのだ。
俺は再び旅に出た。
そして、その直後──。
「な、なんだこいつら……!」
森の中、突如現れたのはネズミ盗賊団。大ネズミの頭領グリードを先頭に、黒ずくめの男たちが不敵に笑っていた。
「こんなチビを始末すれば、勇者の物資を奪えるってわけだ!」
「ひ、ひいい……!!」
俺は必死に木の剣を構えるが、正直、相手の迫力に足がすくむ。
武器屋になりたかった俺が、まさかこんな形で盗賊団との戦闘に巻き込まれるとは……!
「おいおい、そんなへっぴり腰でどうするんだ?」
「く、くるな……!」
震える手で木の剣を振るうが、あっさり弾かれる。やばい、本当に死ぬかもしれない。
「──そこまでだ!!」
突如、辺りに響く凛とした声。その瞬間、銀色の閃光が走った。
「アルベルト!!」
「大丈夫かリスク!」
勇者アルベルトが颯爽と現れ、鮮やかな剣さばきで盗賊たちを圧倒する。俺がまるで歯が立たなかった相手が、数秒で追い詰められていく。
「くそっ……勇者が来るとは聞いてねえぞ! 退け、退け!!」
大ネズミの頭領グリードが怒鳴ると、盗賊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「助かった……」
俺はその場にへたり込んだ。情けない。やっぱり俺は勇者にはなれない。でも……勇者アルベルトは強い。
「リスク、大丈夫か?」
「……ああ、なんとか。」
アルベルトが手を差し伸べる。俺はそれを掴みながら、彼の強さを改めて思い知った。
そして、俺たちは最初の町に到着した。
町に入ると、一人の少女が俺たちを待っていた。修道服をまとい、少し緊張した様子で立っている。
「シスターマリア……?」
「リスクさん……無事でよかった……。」
彼女は小さく頷きながら、ほっとした表情を浮かべた。
「あの盗賊団を倒しに洞窟へ行くから、この町で物資を調達してもらいたい。これから先も、よろしく頼むよ、リスク。」
アルベルトの言葉に、俺は小さく頷いた。
こうして、俺の旅はまだ始まったばかりだった。