表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

195/1098

第三話 悪代官バクザンの罪と罠

「さっちゃん、ゼロ部隊の諜報部ナカムラを呼んでくれ。時間がない」


夜の大エイド街角、アルベルトの声は低く鋭かった。

肩に乗る使い魔、ベビーサタンのさっちゃんがひとつ頷くと、小さな口から火花のような呪文を飛ばす。すると、しばらくして黒装束に身を包んだ忍者男が現れた。


「勇者殿、お呼びとあらば。ゼロ部隊・諜報部所属、ナカムラ、参上いたしました」


声も気配も、まるで影のように薄い。彼こそ、ゼロ部隊の最強スパイだった。


「バクザンの屋敷にある“重帳簿”を探してほしい。正義のためだ」


「承知。証拠は闇より取り出してまいりましょう」


ナカムラは夜の帳に紛れるように影の中で姿を消した。


数日後に、分厚い帳簿をアルベルトの手に渡した。


「……これは!」


アルベルトが頁をめくると、そこにはバクザンが“横領した公金の行方”が事細かに記されていた。村の財産を没収し、私腹を肥やしていた事実、それこそが、お雪の父の無実を証明する動かぬ証拠だった。


「これで、すべての嘘を終わらせる……!」


アルベルトとお雪は、正面からバクザンの屋敷へと乗り込んだ。


「……出てこいバクザン!俺たちは、お前の罪を暴きに来た!」


「ふん、勇者がこんなところで何を……」


広間の奥から現れたのは、黒い正装を着たバクザン。だが次の瞬間、四方の扉が音を立てて閉まる。


「……お前たちが来るのは分かっていたよ」


バクザンが指を鳴らすと、無数の武士たちが壁の影から現れ、抜刀する。


「やれやれ、死人に口なしとはこのことか」


「くっ、罠だったのか!」


アルベルトが剣を構える。だが数が違いすぎる。


「私の罪だと? そんな証拠は……燃えて消えたんじゃないかな」


バクザンの視線の先では、お雪が持っていた帳簿に火が放たれていた。

背後から忍び寄っていた刺客が、火矢を打ち込んだのだ。


「やめろおおおおおおおおおおおお!!!」


お雪が叫ぶが、すでに炎は回り、文字を飲み込んでゆく。

絶望と、怒りと、焦燥

すべてが交錯したその瞬間、アルベルトが言った。


「……確かに、帳簿は焼かれた。でも....もう一冊ある」


バクザンの顔が引きつる。


「なに……?」


「ナカムラ、お前が写しを用意してくれたんだよな?」


影のように現れたナカムラが、涼しい顔で新たな帳簿を差し出した。


「ゼロ部隊、伊達に情報屋はやっておりません。すべてコピー済みです」


バクザンの顔が青ざめる。


「さあ、正義の刃を受けろ!」


お雪が流星剣を振るい、武士たちをなぎ倒す。


「これが……父の汚名を晴らす刃よ!!」


夜の広間に、火の粉と怒号が舞った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ