第8話 キャサリーの本当のメッセージ
――静寂よりも深い“音の闇”が語りはじめる――
救出された4人の音楽家たちは、
光を嫌うように、ゆっくりと意識を取り戻していった。
彼らの身体は傷ついていたが、
魂は、まだ“音”の檻の中に囚われている。
ロザンナが指を震わせながら魔導式を起動すると、
ホール全体に柔らかな光が満ちてゆく。
そしてそこに
キャサリーの“魂の残響が現れた。
透明な人影。
風と音の境界に立つような、儚い影。
次の瞬間、
アイゼンの胸に直接響くような声が流れ込んだ。
「アイゼン……あなたにだけは、生きていてほしい」
その声は、
泣いているようでもあり、
微笑んでいるようでもあった。
アイゼンは反射的に名を呼ぼうとするが、
声にならない。
キャサリー
「私はベルマの魔導を見抜いた。
“音を喰う芸術”
あれは魂を殺す式じゃない。
魂を“延命燃料”として消費する地獄の芸術よ」
ルアーナは青ざめた。
「じゃあ、失踪した音楽家たちは……!」
キャサリー
「彼らはまだ間に合う。
あなたたちが助け出してくれたから……
魂が完全に“食われる”前にね」
リュカは拳を握りしめて叫ぶ。
「そんな……そんなこと……!
どうしてキャサリーさんが犠牲にならなきゃならないんだよ!」
キャサリーの残響は、彼にそっと視線を向けた。
キャサリー
「犠牲じゃないわ。
ベルマを倒すには、
私自身が“音”になるしかなかったの。
あの人は、私の声を私の音を信じているから」
アイゼンは強く目を閉じた。
彼女のその言葉は、胸の奥を深く刺した。
そしてキャサリーは本当の“暗号”を告げる。
光が揺らぎ、
空間が波紋のように歪んだ。
キャサリー
「エコーアーカイブは……もともと“都市”じゃないの。
ベルマが見つけたのは、もっと古い――
“魂の音”を採取するための、古代神殿だったのよ」
ロザンナ
「まさか……エコーが“都市を装った罠”だというの?」
キャサリー
「ええ。
ベルマはその神殿を利用して、自分の生命を保っていた。
だから――」
声が小さく震えた。
「アイゼン、あなたが来ると信じていた。
私を助けるんじゃない。
あの人を……止めて」
やがて、光の残響は薄れ、
キャサリーの魂は再び“音”の中へ溶けていった。
アイゼンは、誰にも見せない表情で呟く。
「……約束する。
ベルマ。
お前の狂った芸術も、
キャサリーの悲願も……
俺が終わらせる」
そして、
物語はいよいよ――
“音を喰う怪物”ベルマの正体
地下都市が生まれた秘密
その核心へと突き進んでいく。




