↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【127万PV突破】 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『魔王と勇者の継承者(デュアル・ヘリテイジ)ダイ・マオウの大冒険』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1888/1908

第5話  赤い階段の下で待つ影 、 暗号:E-9-RED

港町レムノンの夜霧を切り裂くように、

オルガンの“異音”は冷たく規則的だった。


ルアーナは携帯型周波数解析器を使い、

音の波形をひとつずつ解読していく。


「……出たわ。アイゼン、見て」


波形の隙間に浮かび上がったのは――

E-9-RED

という不可解な暗号。


リュカが眉を寄せる。


「Eって……アルファベット? それとも音階?」


レイヴは壁にもたれたまま、冷えた声で言う。


「Eは“エコー”だ。

この港の下に眠っている、古代の音律都市《エコーアーカイブ》。

魔術師と音楽家が共存していた“失われた街”だ」


ルアーナの目が輝く。


「学会で噂だけ聞いたことがある!

でも本当に存在してたなんて……!」


「9ってのは?」

リュカが問う。


アイゼンが低く答えた。


「《第9ホール》だ。

エコーアーカイブを象徴する中央区画。

千年前の大晦日コンサートを最後に、

誰も辿り着けなかった“幻の場所”。」


ルアーナは最後の語を読み上げる。


「RED……“赤”。

キャサリーのハイヒールと同じ色……」


全員の視線がアイゼンに集まる。


彼は煙草も吸わず、ただ静かに言った。


「……行くぞ。

キャサリーが呼んでる」


その声は、地下へ沈む鐘のようだった。


■ 地下都市《エコーアーカイブ》入口

港の外れにある、

立ち入り禁止の旧倉庫区画。


モクモクした潮気の奥に、

階段の入口がぽっかりと隠されていた。


ルアーナが驚く。


「ここ……知らなかった……」


レイヴが淡く笑う。


「普通の人間には“音”が聞こえないからな。

君らは今、キャサリーの残した“声”に導かれてる」


アイゼンは飾り気のない魔術灯を取り出し、

階段の闇を照らす。


そこには――


赤いハイヒールの“片方”が、階段の1段目にそっと置かれていた。


リュカ:「……これ、キャサリーの……」


アイゼンはしゃがみ、

靴の底についた砂を指で払う。


「ここを通った。

わざと残したんだ……“私を追え”と」


彼は立ち上がり、階段の奥の闇を睨んだ。


「キャサリー……お前は一体、何を見つけちまった?」


エコーアーカイブ内部

階段を降りるにつれ、

空気は湿り、音が変質した。


まるで足音が“二重に響く”。


リュカは肩をすくめた。


「これ……誰かに歩幅を合わせられてるみたい……」


ルアーナは周囲をスキャンしながら言う。


「ここの空間、音の反射が異常。

まるで生きてるみたいに、返ってくる……」


レイヴは表情を消す。


「世界の“死んだ音”が溜まる場所だよ。

古代魔術で封じられた、音の牢獄だ」


そして、曲がり角の奥に――

深い赤の灯りがともる 《第9ホール》 の入口が現れた。


アイゼンが歩みを止める。


そこには、壁に刻まれた古い文字。


E-9-RED

“赤い階段の下で待つ影”


アイゼンは誰にも聞こえないほどの声で、ひとこと呟いた。


「キャサリー……お前の“最期のメッセージ”、ここにあるんだな」


ホールの中から、

またあの哀愁のハモンドが

微かに、泣き出すように鳴り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。