第5話 地下の裂け目 ― 北の巨人の覚醒
氷の谷の中心が、不自然な静寂に包まれた。
次の瞬間——
大地が沈む。
ゴオオオオオオオオッ!!
氷壁が一斉に崩壊し、
まるで大陸そのものが割れるような轟音が谷を引き裂いた。
囚人たちの足元が崩れ、
巨大な裂け目が地の底まで広がっていく。
地下から、恐るべき“光”
裂け目の底で、青白い光が脈打った。
ドン……ドン……ドン……
まるで心臓の鼓動。
いや——これは鼓動ではない。
目だ。
氷を割って覗いた巨大な球体。
直径は小屋ほどもあり、
虹色の血管がヒビのように表面を走り、
中心の瞳孔がゆっくりと「こちら」を見た。
北の巨人が、片目を開いたのだ。
光が囚人たちに触れた瞬間、
数名がその場で膝をつき、息を荒げた。
囚人A
「ぐっ……力が……吸われて……!!」
囚人B
「体が……鉛みたいに重い……!」
ルアーナが青ざめる。
その手には、霜で白くなったメモ帳。
もう片手には“氷結反応式装置”が微弱に震えている。
ルアーナ
「やっぱり……!
この鉱石も、巨人の一部……!
巨人は周囲の生命エネルギーを吸って回復するのよ!!
吸われたら……全員死ぬ!!」
死神は裂け目に近づき、巨人の目の光を浴びながら震えた。
死神
「あああ……この匂い……
死の息吹、命の蒸発……甘ぁ〜い……!」
「こりゃあ……大宴会だ……イヒヒヒヒヒヒ!!」
アイゼンハワードは舌打ちする。
アイゼンハワード
「宴会にするにはちと騒がしすぎるわボケ。黙っとれ。」
死神はニヤニヤしながら老人の背後に寄る。
死神
「お前さん……逃げずに立つ気か?
巨人は“生きとし生けるものすべて”を食うぞぉ……イヒヒヒヒ」
大地が再び震えた。
裂け目の奥で巨大な“氷の皮膚”が蠢き、
氷山の底が動いているような地響きが起こる。
氷の膜に覆われた腕のようなものが、
ゆっくりと持ち上がる。
ミシミシミシ……!
その内部には、
青い鉱石が骨のように並び、
氷脈が血管のように脈打っていた。
巨人はまるで
氷と鉱石と生命を混ぜて造られた怪物だった。
瞳孔がさらに大きく開き、囚人たちを見回した。
巨人(心の声のような低音)
「……ア……リ……ヲ……クレ……」
リュカが震える。
リュカ
「あ……あれ、生きてるの……?」
アイゼンハワード
「あのサイズで死んどったら、もっと静かじゃよ。」
背後から、氷を砕く音。
ザッ……ザッ……ザッ……!
追手の看守隊が続々と到着し、銃を構える。
先頭にはバルゴ看守長。
彼は巨人の光を浴びながら、顔を一切変えない。
バルゴ
「……これが、地下で脈打つ音の主か。」
死神がクスクス笑う。
死神
「どうするんだい“盲目の番犬”……?
敵は老人でも子どもでもなく——
大陸そのものだぜ……イヒヒヒヒ」
バルゴは振動を読み取り、杖を鳴らす。
バルゴ
「逃亡者も巨人も、まとめて静める。」
アイゼンハワード
「無茶苦茶言うとるぞ、あんた。」
裂け目の奥が、さらに強く光る。
巨人の二つ目の瞳が
ゆっくりと
開く。
ドンッ……ドンッ……ドンッ……!!
囚人たちの体温が奪われていく。
地面がひび割れ、氷の谷が崩れ落ち始めた。
ルアーナ
「まずい!!
巨人が完全に起きたら、この大陸が丸ごと沈む!!」
アイゼンハワード
「だったら寝かせる方法を思考せよ。」
死神が嬉しそうに拍手した。
死神
「出た出たァ!老人名物・無茶ぶり根性!
この状況で言うことじゃないだろ……イヒヒヒヒ!」




