エピローグ 夜空にかかる虹と、ふたりの約束
魔竜を討ち果たし、この世界に再び平穏が戻った。
空を駆ける《アストラ=バルムガンド》は、青い海を越え
目指すは、英雄リスクが隠れ住む「リスクの島」。
「見えてきた……あれが、リスクさんの島……!」
エリックが目を細めて呟く。
「風があたたかい……春の匂い気持ちいい!」
カンナ姫が静かに微笑む。
「おぉ~!田舎!いい感じの田舎っ!うっわー!牛いる!ねぇフラちゃん、牛の顔撮ってー!!」
「さっちゃん、今は記念写真じゃないです……ってもう走ってるし!」
やかましい声と共に、魔導飛行艇はゆっくりと着水した。
港には、村人たちが総出で待っていた。
その中央に立つのは、今や伝説の英雄となったリスクと、やさしく寄り添うシスターマリア。
「来てくれてありがとう、みんな……そして、おかえり」
リスクの穏やかな声に、皆の胸が熱くなる。
「リスクさん、マリアさん……ご結婚おめでとうございます!」
カンナ姫が花束を差し出す。
「ふたりとも最高にお似合いですよぉぉぉぉ!!!」
さっちゃんが全力で抱きついて、マリアに顔をうずめた。
「やばいっすねこの幸せオーラ!胃がもたれるレベルで甘いっす!リスクさん!マリアさん!…結婚って、いいですねぇぇぇ!!!」
「やっぱり子供は多い方がにぎやかだよね。」
「さっちゃん、まだ早いよ」
「落ち着けさっちゃん」
アイゼンハワードが、ふらりと現れてワイン片手に静かに制した。
「うわ、でた!クール系ツッコミ殺しの人!この空気、クールで切れ味ありすぎィィィ!」
村の広場では、祝いの宴が開かれた。
リスクとマリアの幸せを祝う村人たちに混ざり、5人の飛行船の戦士たちも思い思いに時を過ごす。
フラちゃんは村の子供たちに優しい魔法を見せて拍手喝采を浴び、
さっちゃんは屋台の料理を片っ端から試食し、
アイゼンハワードは静かに空を見上げながらワインを傾けていた。
そして夜が訪れ、星が空に瞬くころ――
「ちょっと散歩しない?」
カンナ姫がエリックを誘った。
ふたりはそっと村を抜け出し、灯りの消えた小道を歩き出す。
……その数歩後ろ。
草むらに張り付いている人影が。
「よし、行け、エリック。今しかない。指輪がなくても気持ちは伝わるってば……!」
さっちゃんだった。
「やっぱりこの島、告白スポットすぎるでしょ!?マジで感動ポイント100万点!」
ふたりが手を繋いだ瞬間――
「でたーーーーー!!ついにーーー!!!公式ーーーー!!!おめでとおぉぉぉ!!!(小声)」
「さっちゃん……全部聞こえてるよ」
「えっ!?まさかのカンナ姫!?ちょっ、こっち見たー!見ちゃダメー!!」
星空の下、ふたりの影が寄り添う。
静かに夜空にかかる虹が、彼らの未来を照らしていた。
その後ろで、さっちゃんは草の中でもだえながら叫んだ。
「世界が、尊すぎて、終わるーーー!!」
ここまで私の日記を読んてくれてありがとう!(by さっちゃん)
『アル様とさっちゃんの魔竜討伐日記』
完結