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【ランキング12位達成】 累計58万PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『アル様とさっちゃんの魔竜討伐日記』

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第七話 魔竜《ディアヴォルト》復活

空が、燃えていた。

まるで世界そのものが、地獄へと変わろうとしているかのように。


「……我が名は、闇の司祭カザール」

「ここに、世界の終焉を捧げる――!!」


その声は、地鳴りのように大地に響いた。


破壊された血の神殿の奥深く、《黙示の谷》に建てられた“屍の神殿”。

無数の人間が、逆さ吊りで天井から吊るされている。


老いた者、子ども、妊婦までも。


「命は等価だ。ならば貴様ら全員、生贄に値する。」


“ズルッ……ドボンッ”


大量の血が、魔方陣の核へと吸い込まれる。

カザールは微笑んでいた。

冷たく、虫けらでも見るように。


「これで、99の生贄が揃った。あとは…最後の鍵だ。」


そう言って、彼は自らの胸をナイフで刺した。

血が、蒼黒く輝きながら、空へと放たれる。


「師よ…貴方は甘かった。力なき理想に、裏切られて死んだ!」


「だが私は違う。この世界に“絶望”という真実を刻む!」


黒杖を掲げた瞬間、空が裂けた。


〈Mors ex Tenebris, Animarum Mille Flammae──〉

(死は闇より、魂は千の炎となれ)


〈Atrum Pactum, Rubedo Sanguinis──〉

(黒き誓約よ、赤き血潮に応えよ)


〈Vocare Draconem, Vetus Malum──〉

(呼び醒ませ、竜よ──古の災いよ)


〈Diabolus Dormiens Excitatur──!!〉

(眠れる魔を、いま目覚めさせよ!!)


祭壇の空が割れ、赤黒い雷が大地に降り注ぎ始める。


「献げよ、愚かな命どもよ!

その悲鳴が契約の代償!!


我は扉なり、深淵なり──

我が名はカザール!!

魔竜ディアヴォルトよ……

貴様の檻を、我が呪詛で復活をさせるッ!!」


ズドォン! ゴゴゴゴゴゴ……!!

ドドドドドドドドドドドッ!!!


谷の中心、赤黒く染まった魔法陣が地なりとともに震える。


“それ”は、そこから出てきた。


魔法陣の中心から、禍々しき漆黒の爪が、突き破って現れた。


次の瞬間、天を割るように咆哮が轟く。


「──グアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!!!!」


挿絵(By みてみん)


魔竜ディアヴォルト。翼は嵐。牙は滅び。

その咆哮だけで、大地がひび割れ、空が黒く染まる。


「──グアアアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!!!!!」


それは音ではなかった。

魂を削るような振動。

鼓膜を突き破るような絶叫。

理性を焼き尽くす呪詛そのものだった。


天に浮かぶ星々が、震えた。

魔竜ディアヴォルトが、翼を広げる。


その翼は、雷雲を巻き込み、竜巻を生む。

その眼は、存在するだけで命を喰う深淵。


咆哮ひとつで、谷の魔族たちが泡のように崩れ落ちていく。

空気が震え、大地が軋み、時さえ止まったようだった。


カザールが狂ったように笑う。


「見よ、これこそが“真理”だ!

 平和など夢幻! 幻想!

 世界を統べるのは、唯一絶対の力のみッ!!」


その姿にさっちゃんが思わず叫ぶ。


「お前が一番幻想に縋ってんじゃねーかあああああああ!!!」

「誰だよ! 魔導士の弟子だった奴が、こんなRPGラスボスコース踏むなんて聞いてねぇよ!? ねぇ誰台本書いたの!? 書き直してぇええ!!」


しかしその絶望を、ただ一人。静かに打ち払う者がいた。


アイゼンハワードことアル様。

爆風で舞うマントを背に、白髪をなびかせながら、堂々と前に進み出る。


彼は魔竜ディアヴォルトを睨みつける。

そして、ゆっくりと呟いた。


「……吠えるな、獣。」

「その声に怯える者は、もういない。」


「この空は、貴様のものじゃない。

 絶望の吐息などで、染めさせはしない。」


そして、指を前に突き出し、静かにだが力強く言い放った。


「闇に堕ちた者よ。

 この世界の平和を、取り戻すために 俺が“魔竜”を断つ。」


仲間たちの背筋が、ぞくりと震えた。

だがそれは恐怖ではない。

希望だ。


その言葉に、力を得た乗組員たちが次々と前を向く。


さっちゃんが、小さく、でも確かに呟いた。


「……やっぱずるい。全部持ってっちゃうんだから……」

「でも……イケメンって、そういうもんよね……!」



乗組員たちが、震える脚を支え、武器を取る。


「奴が支配しようとする世界など、渡せるか」


「立ち向かうぞ。……これは、俺たちの世界だ!」


さっちゃんが涙目でツッコミを入れる。


「くっそぉー! なんでいつも最後はイケメンが持ってくのよ!

 私が頑張ってたじゃん!? 魔導センス光らせてたじゃん!? ねぇ!? 今こそMVPじゃなかったの!?」


魔竜の咆哮と、仲間たちの決意が交差する、決戦の夜明けが、今始まろうとしていた。

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