第六話 空挺任務編・エリックとカンナ、はじめての背中
雲を切り裂き、魔導飛行船《アストラ=バルムガンド》はエンジン音を立てて進んでいた。
目指すは空中に浮かぶ古代遺跡。そこには次なる魔鍵が眠るという。
「潜入任務か……どうせまた騒がしくなるんでしょ?」
カンナ姫は手すりにもたれながらため息をつく。
そこに、ドタドタと走る足音が近づいた。
「カンナさん!準備OKっすか!オレ、ワイヤーと潜入用の空挺装備、点検しました!」
振り返ると、全身装備のエリックが、まぶしい笑顔で親指を立てていた。
「ほんと、あんたって朝からバカみたいに元気ね……」
カンナは思わず笑いながらも、自分の装備を確認する。
夜明け前、空挺部隊として先行潜入するのは二人だけ。
仲間たちは上空で待機。すべては遺跡の結界を破るための偵察だ。
「じゃ、いくわよ」
「おうっ!」
風の音が高鳴る。
魔導飛行船の腹が開き、眼下には黒い雲と雷を孕んだ空。
「せーのっ!」
カンナが先に跳ぶ――と思った瞬間、足を滑らせた。
「うわっ——っ!?」
バランスを崩す彼女の腕を、エリックが瞬時につかんだ。
「アブな、足元には気をつけてくださいっす!」
「う、うるさい! 放してってば!!」
だがそのまま、エリックは彼女をしっかりと抱きかかえるように飛び降りる。
「ちょ、なにやってんのよーーーっ!?///」
風を切りながら、二人は高速降下していく。
エリックの背中越しに見る空は、なぜか広くて、そして――あたたかかった。
(この背中……あのときのリスクの背中と同じ――いや、違う)
(これは、今、私を守ってる背中……!)
どこか胸がくすぐったい感覚に、思わず頬を赤らめるカンナ。
着地の衝撃で砂埃が舞い上がる。
エリックは片膝をついて、彼女をそっと下ろした。
「ふぅ……なんとか無事っすね。よかった〜っす」
「……バカ。何が“よかった”よ、脳筋バカのくせに……」
「ん? なにか言いました?」
「……なーんでもないっ!」
そのあと、二人は連携し、幻影の罠をかいくぐって見事、魔鍵の封印装置の中枢部へと到達する。
撤収直前――
「ねぇ、エリック」
「はい?」
「また……背中、貸してくれる?」
「……え、あ、えぇー!? そ、それってど、どんな意味ですか!?」
「……バッカじゃないの。はやく飛ぶわよっ!」
潜入用の空挺に乗り、再び宙に舞い上がる二人。
だが、今度はカンナの手が、エリックの腰にしっかりと回されていた。
「……なんか今日は、悪くないかも」
雲を抜けるその瞬間、カンナの笑顔は朝焼けよりもまぶしかった。
なんか2人はいい感じ~まだまだ続くよ~!(byさっちゃん)




