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エピローグ0 ゼロ部隊の稼働と新たな未来

あれから世界は、少しずつ変わり始めていた。


停戦の和平協定の成立から三ヶ月。

かつての敵と味方は、今や同じ旗のもとに立っている。


魔界と人間界の国境地帯。

《ゼロ部隊》中立と抑止の象徴として生まれた、新たなる守護の力。


部隊長と司令官は、アイゼンハワードと勇者アルベルト。

しかし、実質的な統括はベビーサタンの“さっちゃん”によって行われていた。


「アイゼンはヴィジュアル面担当、アルベルトは筋肉担当。私は脳みそ担当ってわけね」

そう言って、書類を片手にくるくると空を舞うその姿に、兵たちは次第に頭が上がらなくなった。


俺たちは、魔界門の警備、密貿易の監視、反乱軍の鎮圧、果ては災害支援まで、めまぐるしい日々を過ごしていた。だが、そこにかつての“敵意”はなかった。


グレイス・オマリーと海賊戦士バルドルとエリックは、海の治安維持のため、チビッコ海賊団と共に奔走し、ドワーフの姫カンナは魔鉱の技術を共有する協定を人間界と結び、ナカムラは情報戦の鬼として、表には出ない戦いを続けていた。


たまの休みには、王様から誕生日プレゼントで譲り受けた無人島で村と基地づくりを進めている。

マーリンが魔物を焼き払い、バルドルのチビッコたちが採れたての貝と魚を届けに来る。

海と風が笑っていた。


そして――


「……正式にお付き合い、してます。はい」

照れくさそうに、シスターマリアが手を握り返してくれた日のことを、俺は一生忘れない。


傷だらけの心で、俺たちは出会い、支え合い、

ようやく“人を愛していい”という気持ちを、再び手に入れたのだ。


そして時は過ぎ――


静かな夜明け。俺の島に、産声が響いた。


「……女の子だよ」


マリアが微笑む。小さな、小さな命。

温もりが、胸を満たしていく。


「ほら、パパ。抱っこしてみなよ」

さっちゃんが言う。珍しく、優しい顔で。


挿絵(By みてみん)


俺は震える手で、赤子を腕に抱いた。

その瞳が、俺を見た気がした。


光が差し込む。闇ではない、未来を照らす光。


争いの果てに、ようやく辿り着いたこの場所で、

俺たちは、歩き出す。


新たな命と、新たな世界と、

そして……かつて敵だった者たちと共に。


ゼロ部隊は、今日もまた、魔導飛行船で空を駆ける。


争いなき世界を目指して。



【運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。】


完結


☆イーリス族の“光の弓使い”ライラ☆

かつて、天界の監視者として人間界を冷たい目で見つめていたライラは、

今や地上の《ゼロ部隊》に籍を置き、魔界と人間界を繋ぐ“空の外交官”として活躍している。


「……ねえ、思ったより、地上って楽しいわね」


そう言って、ライラは大空を翔ける。

その背には、かつての銀色の翼の名残を編んだような、煌くマント。

空港の開発に協力したり、イーリス族と地上民との交流プロジェクトを率先したりと、

天界から「地上に一番染まったイーリス族」と噂されているらしい。


そしてときどき、

「あの子、あなたと私の子に似てない?」などと冗談を言って、シスターマリアを困らせている。



■ 人魚族のミーナ■

戦後、海底王国は新たな体制へと移行し、ミーナは正式に“海の友好大使”に就任した。


彼女は今、ゼロ部隊の支援で開発された《海中通信網》を用い、海上国家との文化・技術交流を進めている。


「……水のなかから、あなたたちの世界を見ていたの。こんなに眩しいなんて、知らなかった」


そう語るミーナの周りには、たくさんの子どもたちが集まる。

海の歌を教え、泳ぎを教え、人魚の知恵を伝える。

ときどき陸に上がり、カンナ姫と共同で「水陸両用料理フェス」なども主催しているらしい。


リスクの島にも頻繁に遊びに来ていて、

「うっかり子育て手伝う係」になりつつあることは本人も気づいていない。


◇フランケンシュタインのフラちゃん◇

あの愛すべき半死半生の怪物も、ゼロ部隊の“医療班長”として立派に働いている。


「患者? へーきへーき、縫えばなおる。むしろ死んだら楽だし~(うそうそ)」


かつてはちょっと恐れられていたそのブラックな言動も、今では兵士たちの癒やしになっている。

おどろおどろしい手術道具とお菓子がぎっしり詰まったメディカルバッグを肩に、

「メスよりチョコが効くときもあるのよ」と笑う彼の後ろ姿は、どこか恐ろしい。


ちなみに彼はこっそり、“元死体の権利保護法”という活動を始めている。

魔界の死霊族からは「聖なる改造乙女様」と呼ばれ崇拝されつつあるとかないとか。


◯大ネズミ グリード◯

勇者アルベルトと夜遊びをして、かあちゃんに怒られた。沢山の子どもを食べさせるため工事現場で働いている。


▲竜騎士 ガイア▲

バハムートの卵から産まれたベビードラゴンを教育中、竜に乗ってリスクの島に何れ来るかも。


★召喚士ユスフ=メルハバ★

彼は行く先を告げずに、そっと立ち去った。彼の行方を知る者は誰もいない。


この物語の後日談を書いた。

『アル様とさっちゃんの魔竜討伐日記』

も是非よろしくお願いします。


さっちゃんとアイゼンハワードが主人公の愉快な冒険話です。

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