第8話 南蛮艦隊の圧力
港に現れたのは、
重厚な異国艦隊。
赤と緑の旗。
砲門がずらりと並ぶ。
使節が降り立つ。
背後には、
海を制してきた大国の影
ポルトガル。
彼らは語る。
「我らはアフリカを越え、インドを押さえ、
ブラジルを治め、アンゴラとモザンビークを支配する。」
「海は、我らの道だ。」
事実だった。
彼らはインドのゴア、
南米ブラジル、アフリカ西岸、東岸を拠点に、
巨大交易網を築いている。
そして通告。
「南蛮航路物産は、我が商館と独占契約を結べ。」
「価格は我らが決める。」
「航路は我らが守る。」
「従えば、安定を与える。」
静かな脅し。
拒めば封鎖。
彼らは力を見せつける。
沖合で実弾演習。
港の他商人に圧力。
「従わぬ者とは取引せぬ。」
海の覇者。
世界を巡る植民地ネットワーク。
僕は唇を噛む。
「勝てるのか……?」
その横で、
大友宗麟が笑う。
低く。
「独占は甘き毒じゃ。」
「飲めば楽になる。」
「じゃっどん、最後は骨まで吸われる。」
使節に向かって言う。
「海は誰のもんでもなか。」
空気が凍る。
封鎖が始まる。
我が船にのみ高関税。
補給拒否。
港湾妨害。
圧力は本気。
だが宗麟は動く。
「道は一つじゃなか。」
スペイン商人へ接触。
明の仲買商へ使者。
提案する。
“三角貿易”。
日本の銀と硫黄を明へ。
明の絹と陶磁をスペインへ。
スペインの銀と香辛料を日本へ。
ポルトガルを通さない航路。
リスク分散。
単独依存からの脱却。
港の一部がざわめく。
「危険だ。」
宗麟は言い切る。
「依存こそが一番の危険じゃ。」
最初の三角航海が成功。
利益は分散。
だが安定は増す。
ポルトガル商館は苛立つ。
だが全面戦争はできない。
彼らもまた、
利益を求める商人国家。
封鎖は徐々に緩む。
交渉の席に戻る。
独占は崩れた。
僕は夜の港で呟く。
「勝ったのか……?」
宗麟は静かに答える。
「勝ち負けじゃなか。」
「縛られんことが勝ちじゃ。」
世界帝国の圧力。
植民地を持つ海洋国家の強引さ。
それでも。
南蛮航路物産株式会社は
飲み込まれなかった。
依存から自立へ。
この選択が後の巨大資本戦争の布石になることを、
まだ誰も知らない。




