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【ランキング12位達成】 累計79万9千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く3 ― さっちゃん先生 マフィア編』

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第4話 香辛料の甘い罠

赤道の風。

港に並ぶ異国の帆船。

香りが漂う。


胡椒、丁子、肉桂

世界を動かす黒い宝石。


南蛮航路物産株式会社、

初の東南アジア大型契約。


数量三倍。

長期独占供給。


帳簿の数字は跳ね上がる。


「これで黒字だ……!」


僕は拳を握る。


相手は現地有力商人。

証文も、封蝋も、署名も揃っている。


代金は銀で前払い。

すべて完璧だった。

そのはずだった。


荷が届く。

袋を開ける。

沈黙。


香りが、弱い。

色が、浅い。


鑑定役が顔を上げる。


「……粗悪品です。」


混入。

水増し。

品質詐称。


僕は怒鳴る。


「ふざけるな!」


証文を突きつける。


だが相手商人は微笑む。


「それは我が印ではない。」


封蝋が違う。

署名の筆跡が微妙に異なる。

偽造証文。


代金は既に送金済み。

完全な詐欺。

港の喧騒が遠のく。


血が頭に上る。


「取り押さえろ!」


その瞬間、低い声が響く。


「くっそがああ!」


僕が机を叩いた瞬間


大友宗麟が、ゆっくり口を開く。


「こらぁ……腹ん立つのぉ。」


(静かに)


「じゃっどん、怒鳴っち動けば負けじゃ。」


「怒りは敵ん餌じゃど。」


僕が叫ぶ。


「銀はもう送ったんです!完全な詐欺です!」


宗麟、鋭く睨む。


「黙れ。」


「戦場で声を荒ぐる者ぁ、先に斬らるっど。」


一歩、前へ出る。


「怒りで動くな。証拠で締めろ。」


「印は誰が彫った。封蝋はどこで溶かした。

金はどこへ流れた。」


「全部、洗え。」


机に拳を置く。


「商いはな、斬り合いじゃなか。」


「締め上ぐっ戦じゃ。」


僕が問う。


「でも相手は港の大商人です。背後もいます。」


宗麟、鼻で笑う。


「おはん、まだ甘か。」


「大物ちゅうもんはな、首根っこ掴まるる証拠が一番怖か。」


「刀より怖かもんは帳簿じゃ。」


さらに畳みかける。


「国際裁定に持ち込め。」


「港同士で裁く場を作れ。」


「逃げ場を塞げ。」


僕が驚く。


「国を跨いで裁判を?」


宗麟、目を光らせる。


「海に出たら国境は飾りじゃ。」


「ならば、海の法を作ればよか。」


低く、鋭く。


「怒鳴るな。泣くな。焦るな。」

「証拠を積め。」


最後に一言。


「締める時は、一気じゃど。」


宗麟は即断する。


我々は動く。


まずは封蝋の成分分析。

筆跡鑑定。

取引仲介人の洗い出し。


くノ一部隊は情報収集へ。

宣教師ネットワークを通じ、

港湾役人に接触。


港の帳簿を押さえる。


偽造に使われた印章の製作者を特定。


背後に、巨大仲買組織の影。


これは単独犯ではない。


交易圏を牛耳る

“影の同盟”。


僕は震える。


「潰す。」


宗麟は静かに言う。


「潰すのではない。」

「縛るのじゃ。」


三日後。


封蝋の成分が一致。

印章彫師の証言。

両替商の裏帳簿。


点が、線になる。


背後にいるのは、

港を牛耳る仲買組合。


単独犯ではない。

組織的詐欺。


僕は震える。


「潰しますか?」


宗麟は首を振る。


「潰せば恨みが残る。」


「逃げ場を消せ。」


港の有力商人、

ポルトガル商館、

明の仲介人。


三者協議を提案。


「国際裁定の場を設ける。」


前例のない提案。

港は騒然となる。


公開の場。


証拠が積み上がる。


封蝋一致。

筆跡一致。

銀の流れ。


仲買組合の顔色が変わる。


宗麟が一歩出る。


「詐欺は商いの敵じゃ。」


「敵を抱えた港に未来はなか。」


沈黙。


やがて判決。


賠償金の全額支払い。

さらに交易監査制度の導入。


港の歴史が変わる瞬間だった。


だが。組合の一部が逆恨み。


夜襲。


倉庫放火未遂。


火の手が上がる。


「守れ!」


くノ一部隊が火元を断ち、

盾部隊が港を固める。


血が流れる。


だが炎は広がらない。


夜明け。


港は無事だった。


賠償銀が戻る。


だがそれ以上のものを得た。


交易監査権。

証文登録制度。

国際裁定の中心地という地位。


僕は深く息を吐く。


「勝った……?」


宗麟は静かに言う。


「勝ちちゅうもんはな、」


「二度と同じ手を使わせんことじゃ。」


香辛料の罠は、会社を潰すはずだった。


だが逆に


南蛮航路物産株式会社は

“秩序を作る側”へと進化した。


本当の戦は、信用を巡る戦。


僕は理解する。

世界市場は甘くない。


だが。

恐れぬ者が、

法を作る。


そして宗麟が、最後に笑う。


「舐められたら終いじゃど。」


「じゃっどん

一度締めた相手は、二度と噛まん。」

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