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【ランキング12位達成】 累計7万9千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く3 ― さっちゃん先生 マフィア編』

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1607/1621

序章 海の向こうに産業革命を

港に並ぶ中田運送の船団は、静かに潮を受けていた。

帆は畳まれ、碇は深く海底を掴み、波だけが規則正しく船腹を叩いている。


国内物流は完成した。


北の穀倉地帯から南の港町まで、物は滞らず流れ、

山を越え、川を渡り、街を潤し、日本は一つにつながった。


机の上には、日本列島を覆う物流網の地図。


その外側に、まだ白い余白がある。


海。


僕はその余白を指でなぞる。


「次は、国外だ。」


胸の奥で、何かが燃えていた。


日本は資源が少ない。

だが、知恵と手はある。


鉄鉱石を仕入れ、鋼に変える。

羊毛を仕入れ、洋服に変える。

小麦や魚を加工し、缶詰にする。

木を紙に変え、文化を運ぶ。


原材料を輸入し、国内で加工し、世界へ売る。


順委託加工貿易。


それが、日本に産業革命を起こす道だ。


僕はただ金儲けがしたいわけじゃない。


もちろん、儲かる。

貿易は利益を生む。


だが、僕の野望はその先にある。


港に並ぶ船を見つめながら、僕は未来を思い描く。


製紙工場の煙突が空へ伸び、

鉄鋼所の炉が赤く燃え、

機械が唸り、歯車が回る。


やがて石油を輸入し、

透明な樹脂を作り、

精密な時計が時を刻み、

自動車が街を走る。


そして、重工業。


巨大な船。

巨大な機械。

巨大な国家の背骨。


かつて少年だった僕は、プラモデルの戦車を机の上で走らせていた。

鋼鉄の塊が大地を進む姿に、胸を躍らせた。


あれは単なる玩具じゃない。


技術の象徴だ。

国家の象徴だ。

産業の結晶だ。


僕は思う。


もし日本が、素材を作り、加工し、組み立て、世界に売れる国になれば――

もう何も恐れることはない。


海の向こうに依存するのではなく、

海の向こうと対等に立つ。


それが僕の野望だ。


【南蛮航路物産株式会社】


その名に込めたのは、単なる商社ではない。


航路を握る者が、流れを握る。

流れを握る者が、時代を握る。


国内物流を完成させた今、

次は世界物流だ。


だが現実は冷たい。


金がない。

大型貨物船を建造するには莫大な資金がいる。

港湾整備。前金決済。

為替。保険。


技術も足りない。

造船技術。製鉄技術。

化学技術。


僕一代で成し遂げられる保証はない。


もしかしたら、僕が死んだ後に花開く夢かもしれない。


それでもいい。


種を蒔くのは、今だ。


誰かが最初の航路を引かなければ、

誰も海へ出られない。


港に立つ。


潮風が胸を満たす。


遠く水平線が、静かに光っている。


あの向こうには、未知の市場がある。

未知の文明がある。

未知の可能性がある。


僕は拳を握る。


「日本に産業革命を起こす。」


それは宣言ではない。

決意だ。


中田運送は、陸の王者だった。

だが僕は、それで満足しない。


海を越え、世界を結び、

日本を資源小国から技術大国へ。


南蛮の風を味方につける。


金がなくても始める。

技術が足りなくても挑む。

船がなくても造る。


夢は、帆だ。

志は、舵だ。

そして海は、試練だ。


本当の物語はここから始まる。

僕の野望は、この港から世界へと続いていた。


続く

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