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【ランキング12位達成】 累計79万7千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く3 ― さっちゃん先生 マフィア編』

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第7話 閑さや岩にしみ入る蝉の声

夏。


山寺。

岩肌に、影。

風はない。


動きもない。


ただ

蝉の声。


芭蕉が立ち止まり、筆をとる。


閑さや

岩にしみ入る

蝉の声


響いているのに、静か。


強いのに、目立たない。


僕は、全国の報告書を広げる。


京の町人。

江戸の武家。

堺の商人。

出羽の農家。


どこでも


米が炊かれ、

塩が振られ、

醤油が垂らされている。


誰も驚かない。


当たり前の光景だ。


「……沁みている」


物流は派手だった。


川舟。

飛脚。

チラシ。

価格革命。


だが、完成は静かだ。


戦国瓦版、全国へ

木版刷りの「戦国瓦版」。

物産紹介。

産地物語。

調理法。

贈答の作法。


町から町へ。

寺から寺へ。

城下町から農村へ。


人づてに、読み継がれる。


“お取り寄せ”は文化になる。


越後の米。

瀬戸内の塩。

醤油。

それはもう商品ではない。


生活そのものだ。


「流通は、音を立てない」


最上川の激流も、

問屋との衝突も、

情報革命も、今はもう聞こえない。


ただ、蝉の声のように、

日常に溶けている。


芭蕉が岩を見つめる。

蝉の声が、岩に沁みる。

僕は理解する。


名産品ブランドとは

叫ぶものではない。


沁みるものだ。

瓦版は配られ続ける。


誰もそれを“革命”とは呼ばない。

だが、気づけば、

日本中が同じ味を共有している。


同じ米を炊き、

同じ塩を使い、

同じ醤油を垂らす。


文化が、できた。

蝉の声は止まらない。

だが、やがて秋が来る。


僕は空を見上げる。

次は、海の向こうか。

それとも、さらに深く、日本に沁み込ませるか。

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