第13話 4回〜6回 「連携が生まれ、“野球”になる」
◇4回表(影の集団・攻撃)
マウンドの武蔵。
肩が重い。
呼吸が、少しだけ乱れている。
(……来たな)
剛速球は、もう続かない。
変化球も、切れが落ち始めていた。
先頭打者、鋭い打球。
――だが。
「そこだ」
高田又兵衛。
ありえないほど長い一歩。
腕が、いや槍のように伸びる。
打球を、止めた。
「一塁!」
送球。
だが、少し逸れる。
そこに。
佐々木小次郎。
動いていない。
最初から、そこに立っていた。
捕る。
流す。
完璧な中継。
アウト。
次打者。
高く上がるフライ。
「……来る」
伊東一刀斎。
目を閉じたまま。
寝守備。
落下点に、すでに立っている。
捕球。
そのまま、軽く送る。
アウト。
三人目。
バント。
武蔵、反応が遅れる。
だが又兵衛が前進。
小次郎がカバー。
一刀斎が後ろに残る。
三人で一つの動き。
アウト。
三者凡退。
柳生宗矩、静かに頷く。
「……これはもう、野球です」
卜伝、口元だけ笑う。
■4回裏(剣豪ズ・攻撃)
剣豪ズのベンチ。
卜伝が低く言う。
「走れ。ただし、見せるな」
サインは、
ヒットエンドラン。
先頭、又兵衛。
内野ゴロ。
同時に走者が、スタート。
忍者守備、影を追って一瞬遅れる。
セーフ。
ベンチが、ざわつく。
「……今の、忍術じゃねぇ」
だが後続、凡退。
得点ならず。
それでも空気が、変わった。
◇5回表(影の集団・攻撃)
忍者側、苛立ち始める。
小太郎、影走り。
ダブルスチール。
二塁、三塁、同時に影が動く。
だが、
小次郎、送球を受けず、無視。
一刀斎が、無言で三塁へ。
アウト。
「……なぜ、そこに?」
忍者側、困惑。
武蔵、最後の力で変化球。
三振。
最少失点で切り抜ける。
■5回裏(剣豪ズ・攻撃)
武蔵、打席へ。
肩は重い。
腕が、痺れる。
一刀斎の言葉が、よぎる。
「打つな。斬るな。置け」
小次郎の“間”。
振らない勇気。
初球、見送る。
二球目、見送る。
三球目。
ボール。
四球。
武蔵、一塁へ。
ベンチ、静かに拳を握る。
次打者。
犠牲フライ。
三塁走者が、生還。
1点返す(1-3)
武蔵、息を整える。
「……繋いだ」
◇6回表(影の集団・攻撃)
忍者側、切り札。
合体忍術。
影。
火。
空蝉。
三重構造。
球が見えない。
打球が消える。
だが
卜伝の布石。
「“消えた”球は、ファウルだ」
宗矩、即座に抗議。
「空蝉は“当たっている”。 よって、打球です」
審判、混乱。
協議。
結果、アウト判定。
忍者側、怒号。
だが、ルールはルール。
一瞬の隙に、1点は取られる。
追加点(1-4)
それ以上は、許さない。
武蔵、最後の剛速球。
三振。
■6回裏(剣豪ズ・攻撃)
走者、一人。
卜伝、静かに。
「……まだ、仕掛けるな」
チェンジ。
6回終了
スコア。
剣豪ズ 影の集団
1 ― 4
武蔵、マウンドを降りる。
肩で息をしながら、空を見る。
「……まだ、終わってねぇ」
剣豪ズは、忍術と戦っているのではない。
“野球”で、忍術を包囲し始めていた。
続く。




