第9話 忍者、対策を始める。
剣豪ズとの再戦まで、あと数日。
忍者軍団の影の軍団の拠点は、
驚くほど静かだった。
火もない。煙もない。
分身も、走り回る影もない。
ただ、不穏な沈黙。
霧隠 再三、火遁ピッチャー。
だが今日は、水桶の前で黙々と座っていた。
「……燃える球は、派手すぎた」
火遁を捨て、水遁・沈黙の剛球へ。
球は唸らない。
湯気も立たない。
だがミットに収まった瞬間、
ズン……
捕手の腕が落ちる。
「火は消せる。だが球の重さは消せん」
服部半蔵、影分身の達人。
今日は一人しかいない。
「分身は、もう使わぬ」
忍術帳を閉じる。
「見破られる前提で戦うほど、無様なことはない」
代わりに磨いたのは
モズ落とし打法
振りが、ない。
気づいた時には球は当たっている。
「斬らずに落とす。これも忍び」
忍者たち、グラウンドの四隅に札を置く。
キィン……と空気が歪む。
これは分身感知・結界陣。
武蔵のフェイント
一刀斎の夢想守備
すべての“違和感”を拾う。
「幻は、対策される」
最も不気味だったのは
風魔小太郎。
あの男が、盗塁練習をしていない。
代わりに、ベンチで座禅。
「……影走りは、見せすぎた」
新戦術“走らない影”
牽制を誘う
内野を固めさせる
その隙に、次打者で一気に崩す
「速さは、使わぬほど効く」
半蔵、 再三、小太郎。
三人、円陣を組む。
「剣豪たち、本気ですね」
「ならば、こちらも忍ぶのをやめる」
誰かが呟く。
「……野球になってきたな」
夜。
風だけが吹くグラウンド。
誰もいないベンチに、影が一つ、座っている。
剣豪ズとの再戦は近い。




