第7話 柳生宗矩、戦術と野球を語る。
その日、剣豪ズのグラウンドに異様に落ち着いた男が現れた。
黒装束、無表情、声は低い。
白髪に髭の柳生宗矩。
「本日より、拙者が“参謀兼コーチ”を務める」
武蔵が首をかしげる。
「……コーチって、素振り教える役じゃないのか?」
宗矩、静かに首を振る。
「勝負は、振る前に決まっております」
■ 練習開始 → なぜか戦術会議
忍者チームとの次戦を想定したミーティング。
若手剣豪
「相手、分身の術を使うらしいです!」
宗矩
「分身は“制度”で縛れ」
一同
「???」
宗矩、黒板に図を書き始める。
・走塁ルールの確認
・守備妨害の定義
・“同時に二人いる場合はアウト一人まで”という解釈
「忍術とは“想定外”を突く技。
ならば、想定内に閉じ込めればよい」
武蔵
「剣じゃなくて…法律の話だな?」
■ 審判への根回し(合法)
宗矩は審判団と茶を飲みながら、
ルールブックを一緒に読む。
「この条文、実に美しい」
「ですねえ」
※何も不正はしていない
※ただ“解釈を共有”しただけ
その様子を遠くから見る武蔵。
「……あの人、斬らずに人を動かしてる」
別の忍者たちと練習試合
忍者が分身 → 走塁
審判
「分身は一人まで! もう一人アウト!」
忍者側、動揺。
宗矩、ベンチで一言。
「想定外は、想定されると弱い」
試合後。
武蔵
「野球って…… 腕力だけじゃなく、頭も使うんだな」
宗矩
「剣も同じです。 強い者は、いつも盤面を見ている」
武蔵、静かにうなずく。
剣豪ズに、初めて
“戦術”という概念が生まれた日。
新しい武器は知略だった。
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柳生新陰流
柳生が徳川指南役になる。
時は慶長年間。
天下はすでに徳川家康のものになりつつありました。
家康は知っていました。
天下は「力」だけでは保てない
だが、力を裏打ちする理と覚悟がなければ、いずれ崩れる
だから家康は、
「強い剣士」ではなく
“剣の理を知る者”を求めていたのです。
そこに名が挙がったのが、
大和・柳生の隠者、柳生宗厳でした。
謁見の場宗厳は、
刀を帯びずに家康の前に現れたと伝えられます。
家臣たちはざわつきました。
「無礼ではないか」
「丸腰で将軍の前に立つとは」
家康は静かに問います。
「この者、斬れるか?」
これは試しです。
もし宗厳が動揺すれば、その時点で器は知れる。
宗厳は一歩も引かず、こう答えたとされます。
「斬れませぬ。すでに勝っておりますゆえ」
これは虚勢でも禅問答でもありません。
意味はこうです。
家康は天下人
宗厳はその前に、敵意も構えもなく立っている
すでに「争いが成立しない状況」を作っている
剣を抜く以前に、勝敗が決している
これが柳生新陰流の核心でした。
家康は武将です。
剣の形だけを見ていた男ではありません。
この瞬間、家康は悟ります。
「この男は、人を斬るための剣を持っていない」
「だが、この男の前では、誰も剣を抜けぬ」
それは、将軍にとって最も危険で、最も必要な剣でした。




