第6話 塚原卜伝、監督になる(なお采配は神)
剣で勝つ時代は終わった。
だが勝つために相手を潰す時代は終わっていない。
【大剣豪・塚原卜伝】(本名:塚原 高幹〈たかもと〉)
・「卜伝」=占い・先読みの意味
・生涯無敗
・真剣勝負 200勝以上
・弟子 数千人
突如として剣豪ズの前に現れた、
白髪、細身、目つきがやたら悪い老人。
「……で、勝てるのか?」
それが第一声だった。
武蔵は一瞬で悟る。
(こいつ……強さより勝ちに執着してる)
卜伝は、静かに語り始める。
「昔な……左手斬りを得意とする剣士と仕合うことになっての」
周囲、固唾をのむ。
「わしはその男に、会うたび、言うた」
「左手斬りは卑怯じゃ」
「左手斬りだけはやめてくれ」
「左手斬りを使う者は、剣が浅い」
何度も。
しつこく。
本当に嫌そうに。
武蔵、眉をひそめる。
「……それ、わざとですよね?」
卜伝、即答。
「当たり前じゃ」
卜伝は続ける。
「相手の頭に、“卜伝は左手斬りを恐れている”
という札を貼るのが目的じゃ」
試合当日。
卜伝は、わざと左手を前に出しながら言った。
「ほれ……狙っておるのであろう?」
「わしの左手を……斬りたいのであろう?」
何度も。
何度も。
しつこく。
相手は次第に、
左手しか見えなくなり
間合いを忘れ
呼吸が乱れ
そして
集中力が切れた一瞬。
ズバァン。
「……終わりじゃ」
武蔵、思わず叫ぶ。
「いやそれ、剣じゃなくて精神折りですよ!!」
卜伝は、涼しい顔で言った。
「剣豪はな、負けたら死ぬんじゃ」
「ならば、勝つために出来ることは、全部やる」
「正々堂々?それで死んだ剣豪は山ほどおる」
剣豪ズ、沈黙。
武蔵は、卜伝をじっと見て言う。
「……あんた」
「野球の監督、向いてますよ」
卜伝、片眉を上げる。
「ほう?」
武蔵、続ける。
「相手の嫌がる配球」
「嫌な守備位置」
「嫌なタイミングでの代打」
「全部、今の話と同じだ」
卜伝、ニヤリ。
「つまり……」
「剣を使わぬ戦場でも、相手を“考えさせすぎて”殺せると?」
武蔵、即答。
「はい」
こうして――
二刀流プレイヤー:宮本武蔵
芸術的空振り王:佐々木小次郎
夢想守備職人:伊東一刀斎
守備範囲おかしい男:高田又兵衛
そして
監督:塚原卜伝(せこい・怖い・勝利至上主義)
が誕生する。
塚原卜伝、初采配の一言。
「バント?いや、やると思わせて打て」
剣豪ズ、震える。
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塚原卜伝のとんでも伝説
無手勝流とは
塚原卜伝が船旅中に決闘を挑まれる。
相手「降りて戦え!」
相手「よかろう」
岸に着く直前、卜伝は相手を船から突き落とす。
相手「なにすんだ!この野郎}
卜伝いわく
「これが無手勝流じゃ」
相手「???}
剣を使わず 戦わず 先に勝つ
“命を賭けた勝負は、戦わないのが最上”
それを示した逸話。




