第9話 「日常が流れていく町、流れマン」
朝の光が、
商店街のシャッターの隙間をすり抜ける。
流れマンは、いつもの時間に、
いつもの道を歩いていた。
風邪は治った。
少し痩せた気もするが、
流れを見る目は、ちゃんと戻っている。
「すみません、ちょっといい?」
最初の依頼は、流し素麺の箸が足りないという話だった。
彼は黙って、
流れてくる麺の間を見て、
一番取りやすい場所を指さす。
「ここ」
それだけで、みんなうまくすくえた。
次は、ベンチに座ったおばあさんの世間話。
昔の商店街、
消えた映画館、
初めて買ったラジオ。
流れマンは、相槌だけ打つ。
話は自然に、今日の天気と夕飯の話へ流れていく。
昼過ぎ。
噂が一つ、
町を通り過ぎた。
「疑惑の逆流マン、町を出たらしいよ」
誰も追わなかった。
誰も悪く言わなかった。
それもまた、一つの流れだった。
夕方。
コロッケ屋の前を通ると、
行列は今日も、
ちょうどいい向きで伸びている。
「お、来てたのか」
店主が言う。
流れマンは、名乗らない。
立ち止まらない。
ヒーローの看板も、
拍手もいらない。
流れに逆らわず、詰まりを見つけたら、
少し整える。
それだけだ。
夜。町の灯りが、
一つずつ消えていく。
流れマンは、
橋の上で立ち止まり、
水の音を聞いた。
川は、今日も何も言わずに流れている。
世界は救えない。
でも、
町内なら、なんとかなる。
そう思いながら、
彼はまた、町の流れに溶けていった。
町内ヒーロー 流水戦士 流れマン
☆彡 完結




