表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計68万4千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く3 ― さっちゃん先生 マフィア編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1532/1557

第6話 「流れない素麺の謎」

夏の昼下がり。

町内会の公園は、年に一度の大仕事にざわついていた。


流し素麺である。


竹は昨日から組まれ、

水もちゃんと流れている。


なのに


「止まった!」

「まただ!」

「素麺が団子になってる!」


白い麺は途中で力尽き、

竹の継ぎ目に溜まって動かない。

町内騒然。

大人たちは首をひねり、

子どもたちは箸を握ったまま固まっている。


そこへ、流れマンが現れた。


彼は素麺を見ず、

子どもも見ず、

ただ、竹を見た。


ほんのわずか。

目を凝らさなければ分からない歪み。

昨日、誰かが腰掛けた跡だろう。


「水、多すぎます」


そう言って、

柄杓で少しだけ水を減らす。

竹を、ほんの数ミリ持ち上げる。


するり。


素麺は、何事もなかったように流れ出した。


「おおおおお!」


歓声。

拍手。

子どもたちの目が、きらきらと光る。


「神……?」

「流れの神……?」


流れマンは照れもせず、

ただ次の束を流した。


そのときだった。


「……今日は降りますね」


空は快晴。

雲ひとつない。


「またまたぁ」

「暑さでやられた?」


誰も信じない。

流れマンは、


屋台を見ていた。

焼きそばの手つきが、いつもより早い。

テントを張る人の結び目が、無意識に強い。

人が、空を見ずに動いている。


空気が、重い。


午後三時。

突然、風が変わる。


一滴。

二滴。


「え?」


次の瞬間、

空がひっくり返った。


大雨。


子どもたちは悲鳴を上げ、

大人たちは慌てて撤収。

素麺は流され、

夏は一瞬で終わった。


夕方。

雨はまだ降っている。


誰もいなくなった公園で、

流れマンは一人、提灯を外していた。

濡れた紙を丁寧に畳み、

竹を元の場所へ戻す。


誰にも言わない。

当たったことも、

予感していたことも。


空は、まだ泣いている。


流れを整える仕事は、

拍手のあるときばかりじゃない。


町は今日も、だれも気づかないまま、

ちゃんと夏を越えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ