第１９話 最後の目的地の魔王城へと仲間たちとの別れ
空に浮かんでいた《闇神核》の残滓が、パリン……と小さな音を立てて砕け散った。
その破片が、まるで星屑のようにきらめきながら大気に溶けてゆく。
アルベルトは血に濡れた双剣を地に突き刺し、静かに天を仰いだ。
「兄さん……見ててくれたかな。おれ……やったよ」
リスクがそっと隣に立ち、毒針を腰に戻しながらつぶやいた。
「……見てたさ。きっとな。あんたの戦いぶり、天国でニヤニヤしながら見てたに決まってる」
そこへ、涙目のフラちゃんが走ってきた。
「リスクさああああああんッ！！ もうッ……もう絶対死んだと思ったんだからぁぁぁ！！」
巨大なフラちゃんが抱きつくと、リスクは少し照れたように笑って頭をぽんぽんと撫でる。
「悪ぃな、泣かせちまって。でも、ちゃんと帰ってきただろ？」
「ほんとだよぉ……もう、二度と無茶しないでねっ……！」
巨大な魔物にハグをされリスクは苦しくて死んでしまいそうです。シスターマリアに抱き着いてほしかった。
シスターマリア、マーリン、そしてライラも駆けつけ、無事を喜び合う。
悪魔王ガイアスを倒したことで、俺たちはレベルアップした。
一気にレベルが３も上がった。
勇者アルベルトの体にじんわりとした温もりが広がる。
《勇者アルベルトのレベルが上がった！》
《体力が５５０上がった！》
《力が１５０上がった！》
《防御が１４５上がった！》
《素早さが１２５上がった！》
《賢さが６０上がった！》
《魔力が４２上がった！》
《運が１１０上がった！》
《新しい魔法「トキメキ」を覚えた！》
「トキメキ……？ ど、どうやって使うんだよこれ……攻撃魔法じゃないのか？」
村長のリスクが噴き出す。
「どうせ、女性の心を震わせる系の魔法じゃろ。お主には似合わんわい、ククク……」
シスターマリアの体にじんわりとした温もりが広がる。
《シスターマリアのレベルが上がった！》
《体力が１４５上がった！》
《魔力が１３０上がった！》
《素早さが２４上がった！》
《賢さが１４０上がった！》
マリアは祈りのポーズを取りながら微笑んだ。
「神よ……この力、必ずや人々を癒すために使います……でも『トキメキ』って、どういう意味なのでしょうか？」
リスクの体にじんわりとした温もりが広がる。
《リスクのレベルが上がった！》
《運が６０上がった！》
《賢さが６５上がった！》
《新しいスキル「新装開店」を覚えた！》
リスクは困惑した顔でスキル名を確認した。
「新装開店……？ スキルなのかこれ……？」
ライラが笑う。
「それ店再開したい気持ちが強すぎて、スキルになっちゃったんじゃない？シランケド」
黒魔術師マーリンの体にじんわりとした温もりが広がる。
《黒魔術師マーリンのレベルが上がった！》
《体力が２０００上がった！》
《魔力が１８００上がった！》
《賢さが１８０上がった！》
《運が５上がった！》
《新しい呪文「奈落終焉陣を覚えた！》
「むふふふ……ついに手に入れましたわ、あのガイアスが使おうとしてた黒魔術最終奥義の魔法……！」
リスクは慌てて距離を取った。
「ちょ、ちょっと待てって！ それヤバいやつだろ！？ なんで覚えちまうんだよ！！」
リスクの毒針で神殿を破壊して（近道）で外にでた勇者一行
そんな中、アルベルトとリスクは向かい合い、ゆっくりと拳を合わせる。
「俺は“村人”だぜ？」
「俺は“弟”だよ」
「でも、今だけは……」
「“勇者”って呼ばれても、悪くないな」
二人は力強く笑い合う。その笑顔に、朝日が差し込んだ。
フラちゃんがトラックに飛び乗りながら叫ぶ。
「そろそろ戻んねーと、店の仕入れがヤベぇ！！」
ライラが頷きながら言う。
「私も手伝うよ、フラちゃん」
「ギャルだし言葉遣いヤバいし、雇えねぇって言いたいけど……手伝ってもイイヨ〜！！」
フラちゃんが大きくグーサインを出し、トラックのドアをバンッと閉める。
リスクは静かに呟いた。
「別れってのは、なんか……こう、寂しいな……」
マリアがそっと微笑んだ。
「出会いがあったからこそ、そう思えるんですよ。リスクさん」
フラちゃんたちのトラックが、土煙を上げながら走り去っていく。
見送るその背中に、誰もが心の中で「ありがとう」と呟いた。
アルベルトが、静かに口を開く。
「さぁ……いよいよ、最後の戦いだな」
「魔王城、だな」
「兄さんの、いや……みんなの未来のために」
仲間たちはうなずき、勇者たちは歩き出した。
朝の光が、彼らの背中を照らしていた。
【第十部 完】
フラちゃんとライラと神殿前で別れる勇者たち
