第16話 ゼロの能力者 VS 勇者アルベルト
悪魔王ガイアスとの二度目の戦闘がはじまった。
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名前 悪魔王ガイアス(サターン)
レベル:99
体力:12000
攻撃:9000
防御:9000
素早さ 999
魔力:9000
賢さ:20
運:250
この世界で、魔王軍の4天王のリーダーで魔王軍の総司令官、魂の解放により不死身の身体ではなくなる。鋭い金色の瞳と、長く鋭い爪と漆黒の翼をもつ魔王軍の最高位。
【固有スキル】
闇王の威圧:戦闘開始時、敵全体の攻撃力・防御力を20%低下(永続)。さらに低ランクの敵は2ターン行動不能。
暗黒耐性 MAX:闇属性の魔法・攻撃を完全無効。さらに光属性の攻撃も50%カット。
魂喰いの眼:HPが50%以下になると、自動で敵一体の最大HPを吸収。 1戦闘につき1回発動。
闇の覇者:聖属性の敵に対して与ダメージ2倍。
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「……ぐっ……やめろ……俺は……みんなを……!」
闇に包まれた勇者アルベルトが、剣を構えたまま震えていた。
赤い瞳に宿るのは理性ではなく、黒き呪い《影の同化》によって操られた彼は、今や“闇の魔族”となっていた。
「アルベルト……ダメ……戻ってきて……!」
マーリンが叫ぶが、その声は届かない。
マーリンが封印魔法の詠唱に入ろうとするも、すでに魔法妨害の術式が張られていた。
そんな中、静かに前へと歩み出たのは、シスターマリアだった。
彼女の手には、光を帯びた聖典。震える声で、それでも確かな意志を込めて詠唱を始めた。
「主よ……迷える子羊を導きたまえ……
影に呑まれし者の魂を……再び、光の元へ……!」
「《聖浄解放――セラフィム・パージ》!」
聖なる光がマリアを中心に広がる――だがその瞬間、ガイアスがニヤリと笑った。
「甘いな、聖女よ。お前こそ、先に消えろ――!」
天が砕けた。
黒い雷雲が渦を巻き、そこから迸ったのはあの技――
「《真・魔神雷槌》(しんまじんらいつい)!!」
凄まじい咆哮と共に落雷が襲う。
しかも相手はシスターマリア――聖属性。闇雷との相性は最悪だった。
「――きゃああああああああああっ!!」
聖なる魔法が途中で砕け散り、マリアの身体は雷に焼かれ、吹き飛んだ。
白い修道服が焦げ、床に崩れ落ちる。
「マリアッ!!大丈夫かー!」
仲間たちに衝撃が走る中、リスクが静かに顔を上げた。
その眼差しは、すでに覚悟を決めていた。
「シスターマリア。俺にいつもの“アレ”を頼む!」
瀕死のマリアがうっすら目を開ける。
「……はい……リスクさん……ディーペイト、ですね……!」
彼女の唇から最後の祈りが零れ落ちた。
「―聖なる風よ、リスクに鈍足を!《ディーペイト》」
風が渦巻き、リスクの足元に黄金の紋章が浮かび上がる。
【リスクの素早さが 0 → -45 へ低下しました】
彼の真の力 。
「発動した……ゼロ能力者のスキル!」
■《Lightspeed Execution》
静寂が爆ぜた。
リスクの身体が黄金の光に包まれ、その場から消えた。
風の音すら追いつかない。目にも留まらぬ速度で、リスクは一筋の光となり―“時の狭間”すら突き抜ける。
アルベルトの剣がシスターマリアに振り下ろされる、その寸前。
「うおおおおおおおおおおおっっ!!」
リスクの光がアルベルトの正面に突如現れ、右手の親指と人差し指で何かをつまんでいた。
「喰らえッ! 笑わし草ッ!!」
次の瞬間。
リスクはそのまま勇者アルベルトの口の中に“笑わし草”をぶち込んだ。
アルベルト「んぐっ!? もぐ、もが……っ!」
一瞬の静寂のあと、世界が爆ぜた。
「ぶふっっ……ぶははっ……はっはっはっははっははっっっ!!」
アルベルトが大爆笑した。
顔を真っ赤にし、目に涙を浮かべながら、腹を抱えて笑い転げる。
笑わし草の効果は絶大。しかも“闇に飲まれていた心”が大きく揺らぎ、その支配が緩む。
ガイアス「……な、何だと……!」
影が暴走し始め、アルベルトの体から黒い霧が立ち上る。
操られていた意識が、“笑い”によって解放されていく――
「っははっ……ぐふっ……やめろ……リスク……ははははっ……!」
「……戻ってこい、アルベルト! お前は……そんなキャラじゃねぇだろ!」
リスクがそう叫んだ時、闇の紋章が完全に砕け、アルベルトの目から赤い光が消えた。
「……っは……はぁ……戻った……のか、俺……?」
「おう、笑ってたぞ。世界一くだらねぇ草食ってな」
勇者と仲間の絆が、闇を打ち破った。
だがガイアスは怒りに顔を歪めていた。
「ゼロの能力者の茶番めが……我が怒りはみちたりた……!!」
悪魔王ガイアスが最大奥義の必殺技を放つため魔法の詠唱を始めた。




