第14話 神の殺人現場 〜名探偵リスクの推理〜
静寂に包まれたボスの間。
そこには、全知全能の神ゼウスが無残に倒れ、その前に大きな黒き影、悪魔王ガイアスが立ちはだかっていた。
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名前 悪魔王ガイアス(サターン)
レベル:99
体力:????
攻撃:9000
防御:9000
素早さ 999
魔力:9000
賢さ:???
運:250
この世界で、魔王軍の4天王のリーダーで魔王軍の総司令官、噂によると不死の身体で元勇者リンゼルに首を堕とされても生きていたという。鋭い金色の瞳と、長く鋭い爪と漆黒の翼をもつ魔王軍の最高位。
【固有スキル】 ????
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「ようやく来たな、勇者一行よ……だが遅かった。“魂の棺桶”は、もうこの場所には存在しない!」
そう言い放つガイアスの声音は強がっていた。だが、俺の目は見逃さなかった──その一瞬の目の泳ぎ。
声は力強くとも、内心は明らかに動揺している。
「……なぜ、“魂の棺桶”を俺たちが探していると知っている?」
俺の問いに、ガイアスはわずかに顔をしかめた。
「鬼灯館の支配人から聞いたわ! 勇者に拷問されたと……あまりの非道さに魔族のわしも引いたぞ」
「いや、してませんよ」
アルベルトがすかさず釈明する。「勝手にベラベラしゃべってくれました。」
俺は冷静に話を続ける。
「王家の墓にも魂の棺桶はなかった……だとしたら、最後の鍵はここしかない。そして、ある推測に至ったんだ」
ガイアスを真っすぐ見据える。賭けだった。
「王家の墓の碑文を書いたのは、あなたですね?」
空気が張り詰めた。数秒の沈黙の後、ガイアスは言った。
「その通りだ、村人。だが貴様らが来ると分かっていれば、もっと準備しておいたものを……」
(山勘が当たった)確信が走る。名探偵としての直感が、この状況の裏を暴き始めた。
「あなたは“この場所にはもう棺桶はない”と言った。しかし、それは“今いるこの部屋”にはないという意味で……」
俺はガイアスの背後を指差す。
「その後ろの扉の向こうに──あるんじゃないですか?」
「なんのことだ? 村人、知らん。そんなこと言ってない」
焦っている。言い直しが多すぎる。
瞬きの回数が増え、視線は上を向く──これは、明らかに“嘘を考えている”ときの癖。
「扉の向こうは物置だ。何もないぞ。見るか? ん?」
挑発するように笑うガイアス。しかし、すでに俺の頭の中では推理のピースが揃っていた。
「……では、見せてもらいましょうか」
扉を開ける。確かに何も見当たらない。
「な? 言っただろう」
「ええ、確かに“見える限り”では、ですね。でも、魂の棺桶はここに“ある”と、俺は睨んでいます」
「なんだと?」
「一緒に中に入って確認してもらえますか? 協力していただけると助かります」
「な、なぜ私が入らねばならん!」
ガイアスは明らかに警戒していた。
ここが勝負所だと俺は、核心を突く。
「あなたはそこの男を殺し、この部屋に棺桶を隠す時間がなかった。だから、とっさに“奥の部屋”に無理やり押し込んだ。
さっきのあなたの言動。全部、嘘をついているときの典型的な反応でしたよ」
ガイアスの顔が一瞬で強張る。俺から視線を逸らし、喉をゴクリと鳴らした。
「フラちゃん、悪いけど魂の棺桶を2つ持ってきてくれないか?」
「は、はいなのだ!」
「お前……何をする気だ!」
「棺桶を開ければ、隠された魂の棺桶が反応するかもしれない。……そう思いましてね」
「バカが! そんなものでは──反応せんわ! わしが『魂の解放』と叫ばねば──しまっ…」
ガイアスの口から出た言葉。それが──“魂の解放”。
その瞬間、奥の部屋で沈黙していた魂の棺桶が、光を放ち始めた。
──ゴゴゴゴ……!!
棺桶がひとりでに浮かび上がり、重々しく開かれる。
「しまったああああ!」
ガイアスの3つの魂が重なりそして、そのエネルギーはすべてガイアスの身体へと吸い込まれた。
「残念でしたね、ガイアス」
俺は冷たく言い放つ。
「魂の棺桶は、封印されている間こそ“不死身”の源……あなたがそれを“解放”してしまった今、不死の力は消えたんです」
「なに……!?」
「この瞬間、あなたはただの悪魔王。倒せる存在になったということだ」
勇者アルベルトが剣を抜き、黒魔術師マーリンが魔法陣を展開する。
「……チェックメイトだ、不死身じゃないガイアス」
名探偵リスクの活躍により、ガイアスは不死身ではなくなった。
しかし彼は4天王で最強の敵であることはかわりない。悪魔王ガイアスとの二度目の戦闘がはじまった。