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【ランキング12位達成】 累計58万2千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅7 ― 哀愁のハモンドは鳴り止まない」

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第9話 ハモンドは泣き叫び、真実を告げる

地下都市エコーアーカイブ最深部。

巨大なオルガンが、まるで心臓のように脈動していた。

その中心に

白髪を揺らし、狂気に笑む男が立っていた。


ベルマ・クロウ。


かつてアイゼンと肩を並べ、命を預け合った戦友。

今は“音を喰う怪物”として、魂を燃やす鬼となった存在。


ベルマの指が鍵盤に触れただけで、

ホール全体が悲鳴を上げるように震えた。


ベルマ(狂笑)

「音になったキャサリーは、最高の“楽器”だ。

 永遠に俺の曲を奏でる!」


その言葉に、

アイゼンの背中を冷たい怒りが駆け上がった。


彼は拳を握りしめ、

噛み締めた歯の隙間から低く呟く。


アイゼン

「……あの女は、お前なんかのために音になったんじゃねぇ。

 “未来のために”だ」**


ベルマ

「未来? 芸術に未来などない!

 ただ“永遠”があればいい!」


叫ぶベルマの周囲で、音が渦を巻く。

五線譜に刻まれた悲鳴が実体化し、

触れた空気が焼けるほどの圧を生む。


ルアーナが一歩前に出る。

その目は涙を浮かべていた。


「キャサリーお姉さんは、誰よりも優しい音だった!

 あんたなんかに、二度と触れさせない!」


リュカも構える。

「音を喰うなんて……音楽家のやることじゃねぇ!!」


そして背後から

レイヴが静かに呟く。


「魂の震えが聞こえる……

 キャサリーは、まだ戦っている」


四重共鳴魔法クワッド・レゾナンス・ブレイク


四人が一斉に魔導式を展開する。

ルアーナ――光の旋律

リュカ――大地の低音

レイヴ――魂の拍動

アイゼン――“キャサリーの音”を守る誓い


そのすべてが同じ一点へ収束した瞬間


轟音。


光の波。

そして、音を切り裂く衝撃――**


ベルマの悲鳴が響いた。


ベルマ

「やめろ……! 俺の音楽が……永遠が……!!」


壁一面を覆っていた“音を喰う呪い”が砕け散り、

ベルマの身体は崩れ落ちた譜面のように光へと消えていく。


最後に、落ちてくるように彼の声が響いた。


「アイゼン……お前だけは…… 俺の“音”を理解してくれると思って……」


アイゼンは、一言も返さなかった。

返すべき音など、もう何ひとつ残されていない。


オルガンが泣き叫び――


そして、静かに歌い始める。**


狂気の響きを上書きするように、

あの優しい旋律が流れ出した。


キャサリーが生前、

何度もアイゼンに聴かせた

未完成のラブバラード。


柔らかく、温かく、

どこまでも優しい音。


破壊されたホールの瓦礫の中で、

四人はただ立ち尽くし、その旋律に身を委ねた。


ルアーナが涙を拭う。

リュカは肩を震わせて泣いていた。

レイヴは静かに目を閉じた。


そしてアイゼンは……

空気の揺れが止むまで、

ずっと、その音を聴き続けていた。


その旋律には、

こんな言葉が確かに込められていた。


《ありがとう。


さよならじゃないわ。

  あなたの未来で、私は音になる。》


やがて最後の音が、

夜の海へ吸い込まれるように静かに消えていく。



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