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第14話 反逆の戦士バルドルの正体

次の町で勇者アルベルトの卒業旅行の帰りを待つリスクとシスターマリア。しばらく町を散策していると、突然俺の前に屈強な男が立ちはだかった。


「そこの村人、ちょっといいか?」


見上げるような全身筋肉質の体格の男、頑強な鎧に包み、鋭い目つきでこちらを見据えている。俺は直感的にヤバい奴だと察した。


「……なんでしょう?」


「ああ俺の名前はバルドル、実は勇者アルベルトを探している。魔王軍の司令官、悪魔王ガイアス様より勇者討伐の命を受けてな」


えーーーマジですか俺の心臓が跳ね上がる。俺とシスターマリアは顔を見合わせた。俺は知っている。こいつは魔王軍の反逆のバルドルと呼ばれる。魔王軍の将軍の一人だ。


「勇者討伐……?」


「そうだ。勇者の首を持ち帰れば、魔王軍の地位も上がるしな。ハハッ、まったく手間な仕事だぜ」


笑いながらも、バルドルの目は冷酷だった。こいつは本気だ。


「それにしても、最近の魔王軍は妙にうるさくてな。ゼロの能力者だとか、勇者の動向だとか、やたらと情報を収集している。ま、俺はあまり興味がないが」


そう言いながら、バルドルはさらに話を続けた。


「お前、ゼロの能力者って聞いたことあるか?」


「え? ゼロの能力者?」

(魔王軍はすでに知ってるんだセロの能力者のこと)

俺はすっとぼけるが、バルドルは気にせず話を続ける。


「魔王軍でも、ゼロの能力者がヤバイ能力だと噂があるんだよ。はっきりとは分からんが、ガイアス様も相当な興味を持っているらしい。まあ、俺には関係ないがな!」


俺はできるだけ情報を整理しつつ、適当に相槌を打つ。


シスターマリアがとうとう痺れを切らし、俺の袖をぐいっと引っ張った。


「リスクさん、いい加減にしてください! 一体いつまで油を売っているつもりですか? 買い出しに行かないといけないんですよ!」


「いや、俺も今切り上げようとしてたんだって……」


「全然そんな気配ありませんでしたよ! ずーっと話を聞いてるじゃないですか!」


バルドルはシスターマリアの怒りをよそに、俺たちの前で、ひたすらしゃべりまくった。


話が長い。バルドルの言葉は一つ一つが妙にクドく、しかも内容が薄い。


そして、なんと2時間も、魔王軍の愚痴話を聞いてしまった。

完全に時間泥棒だバルドル。こいつは、おしゃべり長すぎクソ野郎だ。


反逆の戦士バルドルなんてかっこいい、名前を付けられているが、俺は知っている部下たちがつけた影の名前は


【話長すぎ老害クソじじい バカドル】だ。


部下たちは呆れてどんどん離れていった人望ゼロの男、それがバルドルだ。


「おっと、悪いな、つい話し込んじまった」


と苦笑いを浮かべる。


「最後に記念にステータスを見せてもらえませんか?」


俺が頼むと、バルドルは


「俺も人気者だからな、構わんぞ」

と胸を張った。


(えっ!敵の人間に自分のステータス見せてくれるのバカなの?)

と俺は思ったが必死に心の声を隠す。


シスターマリアが魔法を唱えた。人間のバルドルはステータスを見ることができる。


「聖なる光がバルドルを記す、ステータス!」


バルドルのステータスが目の前に表示される。


挿絵(By みてみん)


―――――――――

名前:バルドル(戦士)

レベル:50

体力:1800

攻撃:683

防御:329

素早さ:127

魔力:10

賢さ:9

運:135

この世界で話が長すぎて人間に嫌われたため魔王軍に鞍替えした反逆の戦士。

―――――――――


勇者アルベルトよりも圧倒的に強い。それは間違いない。ただし……


(賢さ、9……俺より賢さの値が低い小学生なみの知力だ。)


俺は妙に納得した。これだけ戦闘能力が高いのに、こんなにペラペラと重要な情報を喋りまくる理由が分かった。シスターマリアも呆れ顔だった。


「バルドルさん、それだけ強いなら、話す前にさっさと勇者を倒せばいいんじゃないですか?」


「いや、戦う前には情報収集が大事だからな!」


どの口が言うか。バカなのかバカだった。こいつの脳みそは筋肉で出来ているに違いない。脳筋おとこだった。


こいつが話を続けている間に、勇者アルベルトはどこかで夜の店で酒でも飲んでバカ騒ぎしていることだろう。


「まあ、それはともかく、勇者アルベルトを見かけたら教えてくれ。俺はこの町で少し準備してから、また探しに行く」


そう言って、バルドルは立ち去った。


「……リスクさん、私たちどうするんですか?」


「考えがある。とりあえず、まだ詳細は話さないけどな」


シスターマリアは呆れたようにため息をついたが、俺の目を見て何かを察したのか、それ以上は何も言わなかった。

とりあえず、勇者アルベルトが戻るまでに準備を整える必要がある。そして、バルドルをどうやって騙すか……。

俺たちは次の一手を考えながら、町の雑踏へと消えていった。

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