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【ランキング12位達成】 累計57万8千PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅7 ― 哀愁のハモンドは鳴り止まない」

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第5話  赤い階段の下で待つ影 、 暗号:E-9-RED

港町レムノンの夜霧を切り裂くように、

オルガンの“異音”は冷たく規則的だった。


ルアーナは携帯型周波数解析器を使い、

音の波形をひとつずつ解読していく。


「……出たわ。アイゼン、見て」


波形の隙間に浮かび上がったのは――

E-9-RED

という不可解な暗号。


リュカが眉を寄せる。


「Eって……アルファベット? それとも音階?」


レイヴは壁にもたれたまま、冷えた声で言う。


「Eは“エコー”だ。

この港の下に眠っている、古代の音律都市エコーアーカイブ

魔術師と音楽家が共存していた“失われた街”だ」


ルアーナの目が輝く。


「学会で噂だけ聞いたことがある!

でも本当に存在してたなんて……!」


「9ってのは?」

リュカが問う。


アイゼンが低く答えた。


「《第9ホール》だ。

エコーアーカイブを象徴する中央区画。

千年前の大晦日コンサートを最後に、

誰も辿り着けなかった“幻の場所”。」


ルアーナは最後の語を読み上げる。


「RED……“赤”。

キャサリーのハイヒールと同じ色……」


全員の視線がアイゼンに集まる。


彼は煙草も吸わず、ただ静かに言った。


「……行くぞ。

キャサリーが呼んでる」


その声は、地下へ沈む鐘のようだった。


地下都市エコーアーカイブ入口

港の外れにある、

立ち入り禁止の旧倉庫区画。


モクモクした潮気の奥に、

階段の入口がぽっかりと隠されていた。


ルアーナが驚く。


「ここ……知らなかった……」


レイヴが淡く笑う。


「普通の人間には“音”が聞こえないからな。

君らは今、キャサリーの残した“声”に導かれてる」


アイゼンは飾り気のない魔術灯を取り出し、

階段の闇を照らす。


そこには――


赤いハイヒールの“片方”が、階段の1段目にそっと置かれていた。


リュカ:「……これ、キャサリーの……」


アイゼンはしゃがみ、

靴の底についた砂を指で払う。


「ここを通った。

わざと残したんだ……“私を追え”と」


彼は立ち上がり、階段の奥の闇を睨んだ。


「キャサリー……お前は一体、何を見つけちまった?」


エコーアーカイブ内部

階段を降りるにつれ、

空気は湿り、音が変質した。


まるで足音が“二重に響く”。


リュカは肩をすくめた。


「これ……誰かに歩幅を合わせられてるみたい……」


ルアーナは周囲をスキャンしながら言う。


「ここの空間、音の反射が異常。

まるで生きてるみたいに、返ってくる……」


レイヴは表情を消す。


「世界の“死んだ音”が溜まる場所だよ。

古代魔術で封じられた、音の牢獄だ」


そして、曲がり角の奥に――

深い赤の灯りがともる 《第9ホール》 の入口が現れた。


アイゼンが歩みを止める。


そこには、壁に刻まれた古い文字。


E-9-RED

“赤い階段の下で待つ影”


アイゼンは誰にも聞こえないほどの声で、ひとこと呟いた。


「キャサリー……お前の“最期のメッセージ”、ここにあるんだな」


ホールの中から、

またあの哀愁のハモンドが

微かに、泣き出すように鳴り始めた。


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