プロローグ 哀愁のハモンド
【オープニング ナレーション】
さあ行くぜ。
今夜の主役は、
老練の魔導捜査官・アイゼンハワード。
天才を自称する少女・ルアーナ。
不器用な努力家・リュカ。
そして、“死神”と噂されながら、
誰にも正体を明かさぬ謎の男、レイヴ。
旅の行き先は、いつだって風まかせ。
気まぐれな風と、夜霧と、
どうにもならない人生の行き止まりへ。
今、彼らが辿り着いたのは北方北方の港町。
潮風と夜霧に包まれ、古びた倉庫街が並ぶその町は、
かつて“音楽家の避難港”と呼ばれた場所だった。
その一角に、今は客もまばらな古いジャズバー
「ハモンド・クラブ」 がある。
店の奥には、もう二度と音が出ないはずの
壊れたハモンドオルガンが鎮座している。
しかし深夜零時になると、
誰も演奏していないのに、
かつての名手が帰ってきたかのように
哀愁と未練の混じる旋律だけが流れ続ける。
それは、亡くなった者の“最後の曲”だと
人々は震えながら噂した。
そんな怪異調査を依頼されたのが、
老練の魔導捜査官・アイゼンハワード。
この男、誰もが「引退した」と思っている。
本人すら「これが最後の仕事か」と呟くほどだ。
そして同行するのは
◆天才を自称する17歳の科学少女・ルアーナ
◆努力と優しさで生き延びてきた少年・リュカ
◆“死神”と呼ばれる謎の青年・レイヴ
どいつもまともではない。
だが、どいつも“家族より家族”みたいな存在だ。
そして向かった先でアイゼンは知ることになる。
この怪異は、ただの幽霊騒ぎではない。
死んだはずの“ある女”が、彼を呼んでいる。
その名は
かつてアイゼンが本気で愛した唯一の女。
キャサリー・レイモンド。
哀愁のハモンドが鳴り続ける理由。
港町の夜霧に消えた彼女の死の真相。
失われた恋が残した最後の“音”を追い、
アイゼンの旅は再び動き出す。




