第九話 雪の世界で、たった二人だけ
さっちゃん先生の叫びが空を裂いた。
「告白はぁぁああ!! 神聖なのよおおお!!!」
さっちゃん先生の魔法で 魔力で校庭を一瞬“ホワイトアウト(全停止)
” 全員が凍りつき、告白する二人だけが動ける世界に。
次の瞬間
世界は、白く、静かに、完全停止した。
雪の粒が空中で止まり、
校庭全体の生徒が氷像のように固まり、
時間そのものが凍りついたような世界。
ただし。
動けるのは、
白樺ユキト
と
雪野ひより
だけ。
そして遠くの門前に――
ほほえみを浮かべたさっちゃん先生が立ち、
「変なことしたら容赦しないわよ♡」
と、天使の笑顔で地獄の圧を放ち続けていた。
(逃げ場なし……完全に囲い込みじゃねぇか……!)
ユキトは内心で震え、ひよりは頬を真っ赤に染める。
凍りついた世界の中で、
二人の鼓動だけがやけに大きく響いた。
「ひより」
呼びかける声は、雪灯りの反射で少し揺れながら届く。
ひよりは胸の前でギュッとチョコを抱きしめたまま、
返事ができず、ただユキトを見つめる。
ユキトはゆっくりと歩いて距離を縮めた。
踏みしめる雪の音だけが響く。
「俺…このままじゃ、誰も傷つけずに逃げるだけになる」
「ユキトくん……」
「ひよりの気持ち……ずっと気づいてた」
ひよりの肩が小さく震える。
「でも……」
ひよりは苦しそうに目を伏せる。
「ユキトくんは……優しいから。
誰にでも優しくて……
だから、わたしの勘違いかもしれないって……ずっと……」
ユキトは首を振る。
「違う」
その一言に、
ひよりの呼吸が止まる。
「俺が優しいんじゃなくて……
ひよりには、特別に優しくしてた。自分でも気づかないくらいに。」
ひよりの目が揺れる。
「転んだ時に一番に助けに行くのも、
風邪ひいた時に気になって眠れなかったのも、
……ひよりが笑ってると、俺まで暖かくなるのも。」
ユキトはひよりの手をそっと包む。
「全部、ひよりだけだった。」
・氷室カレンは凍った状態で
《なぜ……なぜ私じゃないの……!?》
と凍りついた涙がつららのようになっている。
・エミは《ひよりちゃん……応援するけど……つらい……》と複雑な顔。
・レイジ会長は、
《……白樺ユキトめ……やはり強敵……》
と歯を食いしばっている。
モクじいは固まったまま
転びかけのポーズで冷凍保存されていた。
さっちゃん先生は門前で
満足げに頷きながら見守っている。
「さぁ、若い二人……進みなさ〜い♡」
ユキトは、ひよりの手を握ったまま
真正面から目を見つめた。
「ひより。
……俺が、好きなのは……」
雪が静かに光る。
世界が、二人だけを照らす。
ユキトは少し照れたように笑い、
「ひより……お前だ。」
その瞬間
ひよりの目に涙が溢れた。
「……っ、ユキトくん……!」
「言えてよかった……
ずっと、大事にしたくて……怖かったんだ。」
ひよりは首を振る。
「わたし……ずっと、ずっと……!」
涙が雪に落ち、
二人は距離を縮め
その瞬間。
パンッ!!
さっちゃんが手を叩き、世界が一気に動き出す。
雪が落ち、風が吹き、
凍っていた全員が現実に戻る。
「はぁーーい、告白タイム終了〜!!
みんな拍手ー!!」
校庭の全員「え!? え!?!?!」
ユキトとひよりは距離ゼロ状態で固まったまま。
カレン「ユキトぉぉぉぉぉぉ!!!!」
エミ「ひよりちゃん……よかったね……よかったけど……うぅ……」
レイジ「……完敗だ。」
モクじい「心が暖かくなるのう……(鼻をすすりながら転倒)」
さっちゃんは満面の笑み。
「さ、青春はここからよ〜♡
壊すのも、守るのも、二人しだい!」
ひよりはユキトの袖を引き、小さな声で言う。
「……これ、受け取ってください……
わたしの……本命チョコです。」
ユキトは微笑んで受け取る。
「ありがとう。
……俺からも、ちゃんと気持ちを返すから。」
雪灯りに照らされて、二人の影が寄り添う。
北の大地学園
ここから恋の嵐は、さらに加速する。
北の大地学園の生徒たち
雪野ひより(女子)—“雪ん子ヒロイン”
白樺ユキト(男子)—“天性の人たらし”
氷室カレン(女子)—“クール系なのに恋愛暴走兵器”
大地ハルト(男子)—“慎重すぎて恋を逃す男”
吹雪エミ(女子)—“ムードメーカーの裏に秘密の恋”
生徒会長・凍堂レイジ(男子)—“氷の王子なのに恋愛に弱い”
雪山の用務員・モクじい— 北の大地学園の裏の番人
雪女カップル(特別出演)この学園の伝説の「恋の守護霊」的存在




