第8話 温泉でバトル
突如、地鳴りが温泉街を襲う。
「ゴゴゴゴゴ……ッ!!」
湯の底が赤く染まり、温泉の地面が裂けた!
「出たぞォォォォ!!敵襲だ!!」
鬼灯館の混浴の温泉の湯けむりの向こうから姿を現したのは
真っ赤な鎧を身にまとった戦士集団マグマ隊士!と天を裂くような咆哮と共に、火口から姿を現す巨大な影ヘルドラゴン!!だった
名前 :マグマ隊士
体力 : 4000
攻撃 : 4500
防御 : 999
素早さ:999
この世界で地獄の火口で鍛えられし灼熱の戦闘集団。赤黒く焼けただれた重装鎧に身を包み、マグマを自在に操る。
名前 :ヘルドラゴン
体力 : 9999
攻撃 : 5000
防御 : 999
素早さ:800 固有スキル ドラゴン 状態異常スキル不可
この世界で全身が灼熱のマグマで覆われ、翼を広げるたびに空が赤く染まる。咆哮ひとつで大地が裂ける。
マグマ隊士は全身を紅蓮の鎧に包んだ、魔界の灼熱兵。
目は灼けた鉄のように赤く光り、手にする大剣からは溶岩が滴っている。
「オレの楽しい温泉旅行を汚すなッ!!」
リスクが風呂桶を投げるが、溶かされるだけだった。
そして、空から――ヘルドラゴン
マグマを纏った黒き竜。
口から放たれる火球は、一撃で町ひとつを焼き尽くすと言われる、灼熱の暴君。
「グゥゥオオオアアアアア!!!!」
温泉街全体が、地獄に変わった。
勇者アルベルトがタオル1枚のまま突撃!
「行くぞォ――双剣奥義・十字爆破斬!」
交差した双剣から、X字の爆裂斬撃が発生!
爆風で吹き飛んだマグマ隊士は壁にめり込んだ。
「さすがアルベルト様……お見事なお風呂殺法ですわ…♡」
マーリンが鼻の下を伸ばす。
空を裂いて飛来したヘルドラゴンの口に、真紅の光が集まり始める!
「灼熱球来るぞー!!逃げろーっ!!」
リスクが叫ぶ。
だが――
「間に合わない!!」
シスターマリアが叫ぶその時!
「――静かにお湯を味わえない獣には、沈黙を。」
湯船の中心に立つ黒魔術師マーリンが、そっと湯に手を入れた。
マーリンの周囲に巨大な魔法陣が展開される。
湯けむりが一瞬で霧氷へと変わり、空気がピキピキと凍っていく!
「水天の祝福を受けし我が水の精霊よ、清き流れとなりて万象を貫かん。現れよ、アクアジャベリン。」
温泉の湯が槍となって天に放たれ、
「水よ――貫け!!」
九本の水の魔槍が、正確無比にヘルドラゴンの体を貫いた!!
「――砕けろ」
マーリンが指を弾いた瞬間、
竜の体は轟音とともに砕け散った!!
ヘルドラゴン、撃破。
【パーティ全員のレベルが2上がった!】
「や……やったのか……!?」
リスクが呆然と呟く。
「ふぅ。これだから温泉は油断ならないわ。寒いわ。」
湯にゆったりと浸かり直すマーリン。
温泉街を焼き尽くさんとしていたヘルドラゴンは、マーリンの凍てつく水魔法により粉砕された。
空には静寂が戻り、地獄の湯に再び穏やかな湯けむりが立ちこめていた。
ライラとフラちゃんが風呂桶を片付けながら、仲良くつぶやく。
「…終わった、ね…」
「戦って、お風呂入って、また戦って、忙しい温泉旅行だったねぇ…」
リスクたちは宿のロビーに戻った。そこには、なぜか正座して震えている旅館の支配人の姿があった。
「ひっ…ひいいいぃぃぃ……!! ど、どうかお許しをぉぉぉ!!」
頭を床に何度も何度も打ちつけながら土下座している。
「お、落ち着けって支配人。なにがあったんだよ」
リスクが声をかけると、支配人はガタガタ震えながら顔を上げる。
「ゆ、ゆ…勇者さんたち……魔王軍に通報しちゃって……本当にごめんなさいぃぃぃ!!」
「通報!?」
ライラとアルベルトが同時に声を上げた。
支配人は涙と鼻水でグシャグシャになりながら、震える手で一枚の紙を取り出した。
それは……
[極悪非道 勇者一行〕と大きく書かれた、魔界の指名手配書だった!通報先は1110番
そこには、笑顔のアルベルトが両手に双剣を持ち、
その横には「民間人を鍋にした」「温泉で魔王を湯煎した」など、とんでもない文言が並んでいた。
「お、お前……悪人にされすぎだろ……」
リスクが顔を覆った。
支配人はガタガタ震えながら、必死で言葉を続ける。
「ち、違うとは思ってたんです!でも勇者の格好してるし、マントも靴もそれっぽいし……!宿が壊されるんじゃって怖くてぇぇ!!」
支配人はさらに深く頭を下げた
「この旅館を壊さないでくださいッ!!出来心だったんです!!客の半分は逃げたけど、いいんですッ!!」
「やれやれ、しょうがないわね」
マーリンがため息をつくと、支配人は震える手で黒い鉄の小さな棺桶を差し出してきた。
「こ、これ……『魂の棺桶』です……!本物です!悪魔王ガイアス様から預かっていたものを……あ、あなた方のような恐ろしい御一行が取りに来るって聞いてて……」
「えっ、オレたちに渡す予定だったの?」
リスクが首をかしげる。
支配人はうなずき、さらに言葉を続けた。
「この棺桶、目的の品ですよね!? 本当にすみませんでした……!!」
「これは確かに……魂が入っている棺桶だわ」
マーリンが棺桶を見つめて、頷く。
支配人は手を合わせながら涙をボタボタと落とした。
「魂の棺桶はあと……残り二つあります。それは……“王家の墓”に……!たぶん、魔界の北にある古代遺跡の中に……!!」
「ありがとな、支配人。壊さないってば」
悪いことしてるみたいだなリスクが笑うと、支配人はバタンと仰向けに倒れ、放心した。
「極悪非道の勇者……だってよ」
アルベルトが苦笑する。
「……まぁ、そう見えるかもね。裸で剣ふるってるし」
ライラがつぶやいた。
「もういっそ本当に極悪になったら?」
マーリンがふっと笑った。
「それで、老舗のお風呂は守れた。それでいいじゃないですか」
シスターマリアがタオルで髪をぬぐいながら言った。
リスクはそっと魂の棺桶を背負い、夜空を見上げた。
「次は……王家の墓、か、って俺たちは墓荒らし?」
俺達はトラックに戻り王家の墓へと再び爆走開始!俺たちは爆走して温泉街をでた。




