プロローグ 辞令!さっちゃん、北の大地へ恋愛の開拓?
冬の魔界教育委員会。
パキパキと氷の割れるような音がする冷えた部屋で、
さっちゃん先生は、いつものように紅茶をすすりながら事務机に足を乗せていた。
「ふぁあ……今年のガキどもも騒がしかったわねぇ。
よし、そろそろ南国リゾートにでも異動して――」
ドンッッ!!
机の上に叩きつけられる白い封筒。
「……辞令?」
さっちゃんは眉をひそめ、イヤ~な予感を漂わせながら封を破った。
中には、信じがたい文言が躍っていた。
『教諭異動通知 さっちゃん先生
北の大地学園
任務:恋愛開拓』
一瞬、部屋の空気が凍りついた(もともと寒いが)。
「……はい?」
伝説の鬼教師の眼が、さらに細く鋭くなる。
「“恋愛開拓”って何よ。私は重機か?
北の大地を耕せっての? 学園の恋も凍りついてんの?」
後ろで教育委員長(小心者の鳥人間)が震えながら言った。
「き、北の大地学園はですね……最近、冬が長くて寒くて……
生徒たちの恋愛が全然芽生えないんです……」
「寒いのは気温でしょ。恋まで凍らせるなっての」
鳥人間は涙目で続ける。
「そ、それで……
“魔界一の仲人”さっちゃん先生に……ぜひ……!」
さっちゃんはため息をひとつ、深く吐いた。
「……あー、もう。分かったわよ。
恋愛でも雪でも何でも溶かしてやるわ。
北の大地ごと、私が温めてやんよッ!」
杖を肩に担ぎ、鬼教師はニヤリと笑う。
「待ってなさい、北の大地学園。
氷点下の恋も、極寒の青春も……
ぜーんぶ私が解凍してやるわッ!」
その瞬間
外でドォォン!と雷が落ち、雪崩が起きた。
まるで北の大地が、彼女の到来を恐れて震えたかのように。
さっちゃん先生の“極寒恋愛開拓”大作戦
いま幕を開ける!




