第12話 世界断層戦線、血染めの王冠に挑む影
逆さ火山の噴煙が覆う空。
黒煙の幕の前で、ブラックセイバーの幹部三人――
ヴァルゴ(暗殺者)
オルフィウス(邪術師)
リディア(暗黒盗賊王)
がスカーレットの前に跪いていた。
彼女はもう、皇女の姿ではない。
血霧をまとい、影を従え、
その存在そのものが“呪い”の化身となっていた。
オルフィウス
「“皇女スカーレット”よ……
王冠は完成した。
お前の力で――世界を書き換えろ」
ヴァルゴ
「秩序を滅ぼし、我らが新世界を――」
リディア
「さぁ、“呪いの器”として働け」
その瞬間、スカーレットの唇が、
ゆっくりと、闇の笑みに歪んだ。
スカーレット
「……命令?
あなたたちが……わたしに?」
影がゆらりと揺れた。
次の瞬間――
ゴシャァァァァッ!!
目に見えぬ呪いの波が爆ぜ、
三人の肉体は宙に浮き、ねじ曲がり、悲鳴すら飲み込まれ――
スカーレット
「ねぇ……あなたたちの“魂”……
どんな味がするのかしら……?」
ズ……ズズズ……!
影から触手のような黒い手が無数に伸び、
三人の魂を引きずり出し、
笑い声とともに喰らい始める。
ヴァルゴの魂
「や、やめろ……やめ――」
オルフィウス
「わたしが……創るはずだった世界が……!」
リディア
「嘘……こんな……最後は……ッ」
ゴォォォォォォッ!!
伝説の王冠の力が解放され、黒き触手のような呪いの影が三人の魂を貪り、笑いながら喰らう。
笑い声は凄まじく、世界を揺るがす轟音となる。
ヴァルゴ
「く……嘘だ……こんな……ッ!!」
オルフィウス
「わ、私が……世界を……!」
リディア
「いやあああああ……ッ!」
スカーレット
「ふふ……ふふふ……
あなたたちの“欲望”……おいしい……」
魂が砕け、霧となり、
彼女の体に吸い込まれて消えた。
スカーレットの血塗られた瞳が冷たく光る。
「…あなたたちの“欲望”も、恐怖も……全部、私のもの」
三人の魂は黒い霧となって吸い込まれ、体は空っぽの骸に変わる。
世界の大地が微かに震え、空気が赤く染まった。
伝説は語る
「その王冠はかつて魔界と人間界の王たちを狂気へ堕とし、
国を焼き、文明を潰し、無数の魂を笑いながら喰った」
今、ブラックセイバー三人がその伝説に追加された。
世界は再び、王冠の呪いによって震え、滅亡への秒読みを始める。
黒い風が世界に広がり始める。
そして物語は、絶望の中心へ。




