第11話 赤の大地陥落、王冠復活と世界の崩壊
逆さ火山
溶岩が天井から滴り落ち、地面には氷のような結晶がのたうつ。
重力が狂った“異界の噴火口”。
王冠の欠片をすべて奪われたアイゼンたちは、
最奥で、ついにその瞬間を目撃する。
巨大な円環石碑の前で、
ブラックセイバーの黒装束たちが儀式陣を構築していた。
黒鎧の将“ドレイク・セイバー”が
王冠の最後の欠片を掲げ、にやりと笑う。
「魔王の遺産、この瞬間を待っていた」
欠片が宙に浮き、
七色の稲妻のような魔力が火山全体を覆い尽くす。
ガァァァァァアアン!!
爆発のような振動とともに、
古代魔王王冠が復活した。
“世界を狂わせる呪い”の源泉だ。
アイゼンは息を呑む。
「……あれが、すべての元凶……!」
火山の重力がさらに歪む。
空間が千切れ、異界の裂け目が蠢き始める。
儀式のエネルギーを受けた亡霊のスカーレットは
胸を押さえて崩れ落ちた。
「いや……来ないで……!
王冠の“声”が……また私を……!」
赤髪が蛇のように波打ち、
両目が深紅に染まってゆく。
バキッ!
背骨が軋む音とともに、
彼女の影が怪物のように広がった。
アイゼン
「スカーレット! しっかりしろ!」
しかしもう遅い。
スカーレットの体から黒い霧が噴き出す。
「私は……皇女でも……人間でもない……
私は……王冠の呪いそのもの……!」
呪われた皇女
誕生。
彼女は叫び、
火山の岩壁を一撃で粉砕した。
ドォォォン!!
仲間たちの顔が凍りつく。
ルアーナ
「うそ……これが、王冠と同調した人間……?」
死神レイヴ
「イヒヒヒ……こりゃあ世界の終わりが見えてきたねぇ……」
重力の奔流が荒れ狂う中、
リュカが叫ぶ。
「アイゼン! あんたの判断が全部ズレてたんだ!
もう仲間の命を賭けられねえ!」
アイゼン
「…………」
ルアーナ
「リュカ!? 今そんなこと言ってる場合じゃ――!」
リュカ
「仲間を見捨てて王冠を追ったあの日から
俺たちは、もう壊れてたんだよ!」
アイゼンは言い返せない。
胸に突き刺さるのは、自分への怒り。
レイヴ
「さあどうする、アイゼンさん。
“世界”と“仲間”……どっちを選ぶ?」
重苦しい沈黙。
三つ巴の勢力が火山で激突しようとしている。
◆世界の大地が赤く染まる
その時
ゴォォォォォォォォ……!!
火山の中心部が裂け、
赤黒い光が地平線の向こうまで伸びていった。
大地そのものが“血の魔力”に侵食されていく。
ルアーナ
「地脈が……反転してる!?
このままじゃ、世界の大地が全部――!」
リュカ
「赤い……血みたいに染まっていく……!」
アイゼン
「ブラックセイバーの狙いは……
王冠の復活だけじゃない……
“世界の書き換え”だ!」
崩壊は止まらない。
火山の天井から溶岩が逆流し、
地上の川は血潮のように赤黒く変色してゆく。
古代魔王の支配領域が、復活を始めたのだ。
全勢力、地獄の三つ巴へ突入
ブラックセイバー
「世界は我らの王国となる!」
呪いの皇女スカーレット
「壊す……全部……ぜんぶ……」
ルアーナ
「やるしかない……でもこの戦力差……!」
リュカは剣を握りしめ叫ぶ。
「アイゼン!! 行くんだろ!?
まだ。終われねえはずだ!!」
アイゼンは静かに息を吸う。
そして
かつての迷いを断つように叫ぶ。
「行くぞ――!
ここで、世界を終わらせはしない!!」
逆さ火山は崩壊し、
三つ巴の戦争がついに幕を開けた。
世界崩壊の残り時間は、あとわずか。




