表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング12位達成】 累計58万PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅6 〜血塗られた王冠を追え〜」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1373/1414

第9話 氷の玉座リュカの覚醒と裏切り

氷海の寺院の中心

永遠に凍った玉座が、不気味な音を立てて脈動していた。


その上に立つのは、囚われたはずのリュカ。

瞳は深い藍色から、血を吸ったような紅へ変わっていた。


亡霊スカーレット陛下が傍で囁く。


「目を覚ましなさい、リュカ。

 あなたは裏切られた。

 あの老人は、あなたより“世界”を選んだのよ」


リュカの瞳が震え、黒い靄が全身に絡みつく。


その声は冷たく、まるで別人のようだった。


「……アイゼン……先生は……俺を捨てた……?」


スカーレットは微笑む。


「えぇ。あなたを利用していただけ。

 ほら刃を握りなさい。

 裏切りには、罰が必要でしょう?」


リュカの右手に、氷の短剣が生成される。

赤い光が脈打ち、彼の心を侵食していく。


氷の玉座での悲劇

寺院に駆け込むアイゼン。

その瞬間


シュッ!


氷の刃が彼の頬を裂いた。


「リュカ……ッ!? やめろ!!」


リュカは表情なく歩み寄る。

その声は氷より冷たかった。


「……裏切り者……」


「違うッ!! 助けに来たんだ!!

 お前を助けるために、ここへ――!」


「嘘だ」


リュカは刃を構えた。


「俺を……“世界と天秤にかけた”くせに」


刃が振り下ろされる。

老人の身体は鈍いが――それでも彼は、


リュカの攻撃を受け止めず、すべて避けようとする。


殺さぬために。

守るために。


死神レイヴの声が遠くで響く。


「イヒヒヒ……これはひどいねぇ、アイゼン。

 愛弟子に殺されるなんて、ドラマとしては満点だけど」


「黙れ、レイヴーーッ!!」


老人の怒声が寺院を震わせる。


氷の刃が胸元を掠め、血が散った。


しかしアイゼンは、反撃しない。

ただ、弟子を抱きしめるように腕を広げた。


「俺は……お前の先生だ。

 裏切るわけがないだろう……?」


その瞬間――

リュカの刃がアイゼンの肩に深く突き刺さった。


「……ふぅ……ざけるなよ……!!!」


叫びとともに、魔力が暴発する。


アイゼンは吹き飛ばされ、氷柱に叩きつけられた。


ルアーナ

「リュカ!! やめて!!

 それはあなたの意志じゃない!!」


リュカ

「黙れ……!

 “裏切り者”はすべて——」


氷の短剣が震え、再び光る。


「……消えるべきなんだ……!!」


その瞬間、レイヴが動く。


「イヒヒヒ……もう十分だよ、ガキ」


死神の鎖がリュカの腕を縛り、

ルアーナが駆け来て彼を抱きしめた。


「帰ってきて、リュカ!!」


リュカ

「……あ……あれ……?

 なんでぼく……」


洗脳が一瞬ゆらぎ、リュカの瞳から涙がこぼれた。


しかし、その代償はあまりにも大きかった


背後で――


ガシャン!


スカーレットが王冠の破片を奪い、消える。


アイゼン

「くっ……!!

 やられた……ッ!!」


ルアーナ

「王冠の破片……また奪われたの!?

 じゃあ……世界は……!!」


アイゼンは血を拭きながら立ち上がる。


「……世界はまた、滅びに一歩近づいた……」


リュカは自分の手を震えながら見つめる。


「俺……先生を……刺した……?」


アイゼンは微笑む。

しかし、その瞳は深く沈んでいた。


「心配するな。大丈夫だ……

 弟子に刺されるのは……今回が初めてじゃない」


ルアーナ

「いや初めてでしょうが!!!」


老いぼれの冗談が、張りつめた空気をわずかに緩める。


しかし


奪った破片を抱えて、

スカーレットは霧の奥でひとり歩いていた。


そこへ現れたのは、

かつて彼女に剣と政治を教えた師父。


「スカーレット……

 王冠に触れてはならぬと言ったはずだ」


スカーレット

「うるさい……もう遅い……!!」


「お前の心は呪いに溶かされている。

 そのままでは――」


スカーレット

「私の心は最初から壊れていたッ!!」


赤い魔力が暴発し、剣が交差する。


闇の決闘は一瞬だった。


師の胸が裂け、血が舞う。


老人は苦笑した。


「……お前は……

 優しい子だった……」


スカーレット

「やめて……その言い方……やめてッ……!!」


師は倒れ、

スカーレットの白い頬に、血が飛び散った。


彼女は崩れ落ちる。


「……私は……どうして……

 何のために……戦っているの……」


王冠の破片だけが、

不気味に赤く光っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ