第7話 崩れゆく都市と三つ巴の魔導戦(マジック・トライアングル)
夜明け前の蒼い光が、荒野の都市を照らし始めた。
アイゼンハワードは古文書を開き、指先で文字をなぞる。年老いた瞳が、まるで若返ったかのように鋭く光る。
「ふむ……“四つの欠片は四つの災厄を呼び、集えば王冠の封印を解く”か。
まるで宝探しの暗号だな、まったく厄介な……」
ルアーナは泣いた痕を残しながらも、強く頷く。
「先生、やろう。博士のためにも……いや、世界のために」
リュカは拳を握りしめ、
「僕たちで……止めよう。誰かがやらなきゃ」
死神レイヴは肩をすくめ、イヒヒと笑う。
「いいねぇ。復讐と破滅の香り……最高だよ、先生ぇ」
アイゼンは杖を肩に乗せ、
「……さて、じじいにもまだ仕事が残ってるらしい」
その瞬間だった。
荒野の都市、襲撃される。
轟音。
街の中央に巨大な黒い魔力爆発が起き、建物がいくつも吹き飛ぶ。
砂煙の中から歩き出てきたのは――
亡霊スカーレット陛下。
紅のドレスに、黒い炎をまとう魔界の女王。
虚ろな微笑を浮かべてつぶやく。
「四つの王冠の欠片……どれも私のもの。王冠が私を選んだのだから」
スカーレット陛下はかつての自分の父が
“王冠の呪い”で狂わされ死んだ過去を語る。
「私は父を失った…
だから世界を二度と狂気に晒さぬため、
私が王冠を支配するのだ。」
だがその声は震えていた。
その背後で、都市の住民の影が一瞬で砂へと変わる。
ルアーナが震える。
「……なんなの、この魔力……こんなの、人間の身体じゃ……」
死神レイヴが口をすぼめて笛を吹くような声を出す。
「こりゃあ……死神でも近寄りたくないレベルだね。イヒヒヒ……」
ブラックセイバーが参戦
遠くの塔の上から、ヴァルゴが刃を構え、
「“陛下”が動いたってことは、獲物はすぐそこだ。取り返すぞ」
リディアは笑いながら縄を回し、
「王冠の欠片? いや、金と権力の匂いしかしないわね。あたし好み」
邪術師オルフィウスが指を鳴らし、都市全体に呪縛霧を広げる。
「さあ、愚かな旅人たち……お前たちの恐怖を私に捧げよ」
都市は阿鼻叫喚に包まれた。
第三勢力:幻術師ヴァイス・シャドウ
崩れる塔の影からひらりと黒マントが舞う。
「ああ〜……混ざりたいのは山々なんだけどねぇ。
“欠片”が揃わないと、このゲームは始まらないのさ」
幻術師ヴァイスが微笑むと、
都市の路地が迷宮のようにねじれ、敵も味方も視界を奪われる。
三勢力が一斉に動き出す。
ブラックセイバー
スカーレット陛下
ヴァイス・シャドウ
そしてアイゼンたち。
世界規模の三つ巴戦に都市が飲み込まれた。
混乱の中、アイゼンは古文書を開いたまま倒れていた少女を救い上げる。
瓦礫を越え、呪縛を払い、老体とは思えぬ速度。
「先生っ!? そんな身体で無理だよ!」
リュカの悲鳴を無視して、アイゼンは杖を地面へ突き立てる。
ゴウッッ!
地面から魔法陣が広がり、都市中の呪力を“解析”し始めた。
ルアーナが驚愕する。
「先生……魔力流を“読む”だけじゃない……“書き換えてる”……!?」
アイゼンは弱く笑った。
「老いぼれでも……やれることは、まだある。
ルパンだって、歳を食っても走るのをやめんだろう」
死神レイヴの目が見開く。
「……先生、それは“天権式”じゃ……人間が使えば命を削る……!」
「構わんさ。守るべきものが……また増えてしまったからな」
魔法陣が都市全体に広がり、
オルフィウスの呪縛霧を逆に“分解”し始めた。
ヴァルゴが叫ぶ。
「何だあの魔法……じじいの魔力じゃねぇ!」
リディアの顔色が変わる。
「ちょっと待って、あれ……“世界の書き換え領域”……!?」
スカーレット陛下は一歩だけ後退した。
「……まさか、生きているとはね。
“あの男”の系譜……アイゼンハワード」
瓦礫と魔力が渦巻く都市中心部で、
アイゼンの身体は青白い光に包まれ、まるで若返ったように立つ。
彼が指を鳴らすと、
幻術迷宮が一瞬だけ割れ、欠片への道が開いた。
アイゼンの名台詞
「さあ諸君、逃げるなら今だぞ。
じじいが本気を出すと……世界がちょっとだけ揺れるからな」
都市の奥で輝いた三つの光点。
それぞれが世界のどこかへ道を示す。
氷海の寺院
天空図書館
逆さ火山
ルアーナ「先生……これって、三つの欠片の場所……?」
アイゼン「旅はまだ始まったばかりだよ。
ここからが本番だ」
死神レイヴがイヒヒと笑う。
「世界崩壊レース、第二ラウンドだねぇ!イヒヒヒヒ」
リュカは静かに覚悟を決めた瞳で言う。
「……必ず守る。もう誰も死なせない」
炎と砂埃の中、四人は次の地へ向かって歩き出す。
王冠の封印を解く四欠片を巡る、地球規模の大冒険が幕を開ける。




