第6話 魔界の観光ガイド爆誕
魔導デコレーションしたトラック《デッドエンド煌号》。
爆音と共に、魔界の荒野をぶっ飛ばしていた。
「右手に見えますのは、千年に一度しか噴火しないと言われていたのに、
今年だけで三回も噴火した“裏切り火山バッドエンド山”でーす!」
「また噴いてんのかよ!もう常時噴いてるじゃねーか!」
「そして左手には〜、炎の大河“デス・ミシシッピ”が流れておりまーす♪
観光シーズンには悪魔の家族連れで大賑わい!」
と、後部座席でメガホンを握るライラ。
……なぜかガイド帽子まで被っている。
「ちょっと待て、何そのテンション。俺たち追われてんだぞ?」
「だって、せっかくだし観光しなきゃ損でしょ?人生一度きりだよ!」
「人生っていうか、魔人生なんだけどな……」
――ゴゴゴゴゴゴ……!
《デッドエンド煌号》は、炎と氷が交錯する混沌の荒野を突き進む。
まるでアメリカ大陸のように広大な魔界地平線の果てが見えない。
地平線の彼方には、逆さに浮かぶ山、踊る雷雲、巨大な悪魔の骨の橋
「リスクさん、あの空に浮かぶ城は何ですか?」
シスターマリアが尋ねる。
「あれは“浮遊城アズラエル”。昔、魔界の王族が住んでたらしい」
ライラが即答する。
「でも今は廃墟で、心霊スポット人気No.1!夜には幽霊が“わっ”て出ます!」
「うわぁ……それ行ってみたいかも……いいねぇえー」
フラちゃんがゾクゾクしてる。変な性癖。
「……なあライラ、ちょっと思ったんだが」
「ん?」
「魔界の観光ツアーって、もしかして金になるんじゃね?」
リスクの目がギラリと光る。
「例えばさ、デコトラを観光バスに改造してさ、
“地獄と感動の魔界ツアー!ナビはギャル添乗員ライラ!”みたいな」
「え、あたしギャル枠?えっへへ〜なんかイケそうかも〜」
ライラが頬を赤らめ、未来妄想モードへ突入。
「ようこそ地獄の魔界観光へ〜!皆さん、成仏するまで楽しんでいってね〜!」
「いや成仏したらダメだろ観光客!」
「オプションで“魂の試練体験コース”とか付けたら、修行系男子に人気かも?」
「地獄ラーメン地獄盛り」とか「マグマ風呂1分我慢チャレンジ」とか……
「グッズも売れるぞ。“悪魔の涙しおり”とか“地獄産パワーストーン”とか」
「それに、ライラの写真集“魔界のギャル添乗員日記”」
「それ絶対買う人いるじゃん……!」
「ちょっとリスク、今何の話してるの?ガイアスどうすんの?」
アルベルトが口を挟んでくる。
「いや、ガイアスの魂って魔界中に分散してるんだろ?だったら、観光しながら調査するのが効率的ってわけよ!」
「わーお、それっぽーい!」
「おまえもノッてんじゃねぇ!」
そんなこんなで、《デッドエンド煌号》は燃える渓谷を越え
血のように赤い月を背に、魔界の温泉地へと辿り着いた。
魔界屈指の癒しの郷「地獄の湯」
・湯に浸かると魂が回復するといわれる“煉獄の泉”
・岩盤浴ゾーンでは三途の川のせせらぎBGM付き
・鬼が番台に立つ「鬼灯館」は、魔族にも人間にも大人気の宿
「うわああ〜!!やったーっ!!アゲアゲーアゲポヨ」
ライラは先頭で飛び跳ねている。
「ふふふ……リスクさん」
シスターマリアが微笑みながら言った。
「案外、観光業も悪くないかもしれませんよ?」
「……悪魔王ガイアスさん、勇者一行はここにいますよ……」
俺は天を見上げた。
頼むからガイアスさん俺たちをゆっくりと風呂浴びさせてくれ。
フラちゃんがデコトラ《デッドエンド煌号》を鬼灯館の駐車場へと駐車し俺たちは地獄の湯へと降り立った。