プロローグ 血塗られた王冠を追え
【オープニングナレーション.】
さあ行くぜ。
今夜の主役は、
老練の魔導捜査官・アイゼンハワード。
天才を自称する少女ルアーナ。
不器用な努力家リュカ。
そして、“死神”と噂されながら誰にも正体を明かさぬ謎の男・レイヴ。
旅の行き先は、いつだって風まかせ。
だが今回も違う。
笑いも油断も許されない、世界の命運を賭けた旅だ。
“血塗られた王冠”
伝説ではこう語られる。
その王冠はかつて魔界と人間界の王たちを狂気へ堕とし、
国を焼き、文明を潰し、無数の魂を笑いながら喰ったと。
封印は永久と思われていた。
だが盗まれた。
誰の手に? 何のために?
判然としない。ただ一つ確かなのは。
このまま放置すれば、次に滅びるのは“この世界そのもの”。
アイゼンハワードは休職中の身を押して杖を握る。
「これが……最後の任務になるやもしれん」
老いぼれの冗談にしては、声に覚悟が滲んでいた。
弟子ルアーナとリュカはすぐ横に立つ。
そして勝手に旅に加わった死神レイヴは――
「面白そうだ。地獄の散歩ってやつだな」と、ただ微笑む。
だが、王冠盗難は単なる事件などではなかった。
魔界の裏社会を支配し、
影の王として語られる存在
黒幕《スカーレット陛下》。
魔族すら名を口にするのを恐れる、血染めの玉座の主。
彼女が動いたとき、
世界はいつも“ひとつ”終わる。
そして今日、彼女が狙うのは、
ただの王冠ではない。
世界の意思を狂わせる“破滅の引き金”だ。
これは
老いた英雄と、未熟な弟子たちと、死神が、
地獄よりも深い闇へ踏み込む物語。
笑っていられるのは今だけだ。
次に口を開く時には、誰かがもういない。
さあ
旅の続きを始めよう。
「アイゼンハワード最後の旅6 〜血塗られた王冠を追え〜」
開幕だ。




