第5話 魔導レンタルカー爆走編
魔界の朝
デトロイトメタルシティの地下バー《死霊の館》で目を覚ました俺たちを待っていたのは……山のように盛られた、真っ赤なカレーだった。
「おはようございます、リスクさん♡ 朝食です♡」
とシスターマリアが笑顔でテーブルを指差す。
その先にいたのは、巨大な鍋をぐつぐつ煮込みながら仁王立ちするマスター・フランケンシュタインの通称“フラちゃん”。
「こ、これは……」
カレーの香りというより、カレーの“圧”がすごい。
鉄板を溶かすほどのスパイスに、魔界の激辛ハバネロ10個分の破壊力。
ご飯は5合。ルーの中にはなぜか煮込まれた牛骨が丸ごと2本入っている。
「…まさか、これ全部……?」と勇者アルベルト。
フラちゃんは腕を組んで、どっしりと構えて言った。
「朝メシを残して逃げる奴は……俺は絶対に許さん! …けと残してもイイヨー!」
「どっち!?!?」
「全部食べてからじゃないと、デコトラの鍵は……渡してもイイヨー!」
俺たちは覚悟を決め、炎のように辛い魔界カレーに挑んだ。
「じぇじぇじぇ〜!激辛ギャル飯きた〜!」
ライラは叫びながら意外と早く完食。
マーリンは冷静に氷魔法でルーの一部を冷やしながら対処。
勇者アルベルトは
「これが真の勇者試練なのか…」
と汗をだらだら流しつつ、最後は気合いで食い切った。
シスターマリアは「神よ……胃袋にもご加護を…」と祈りながら完食。
俺は、涙目になりながらなんとか完食し、ついに……!
「ごちそうさまでしたぁああああ!!!」
「完食確認。じゃあ…………出発してもイイヨー!」
フラちゃんがガレージのシャッターを開けた。
そこには……
ド派手なトラックのフラちゃん特製、魔導デコトラ《デッドエンド煌号》が鎮座していた。車体はメタリックなピンク、無数のLEDが光り、魔法陣がタイヤから浮かび上がっている。屋根の上では、なぜかドラゴン型のフィギュアが回転していた。
「こ、これで逃げるのか……?」
と俺。
「目立ちすぎだろこれ!!!」
とマーリン。
「ギャル的には超アゲアゲなんだけど〜♡」
とライラが大喜び。
「逃げてもイイヨー!」
とだけフラちゃんは親指を立てていた。
そんなやりとりをしていると、突然
空からミサイルの雨。
地を裂き、バイクのエンジン音が響く。
「来たわね……!」
悪魔王ガイアスの手先――バイクに乗った死神のような魔族と、空からミサイルを撃ちまくる空戦魔族が迫ってきた。
名前 :スカルライダー
体力 : 6666
攻撃 : 4500
防御 : 0
素早さ:5000 固有スキル 死者 状態異常スキル不可
この世界で地獄の騎士。爆速で地上を駆け、死者の呪いで周囲を腐敗させる。自らのバイクと一体化しているため、破壊には高い火力が必要。
名前 :ミサイルマン
体力 : 7777
攻撃 : 5500
防御 : 999
素早さ:5800 固有スキル 機械 状態異常スキル不可
この世界で上空から狙撃&爆撃。自爆機能を搭載しており、瀕死になると敵に突っ込んでくる自爆兵器。感情は無く、ただ破壊のプログラムに従って動く。
黒魔術師マーリンの杖が黒き光を放ち、空間に闇の波紋が広がる。
「哀れなる命の灯火よ、お前たちの鼓動は、もはや“その時”を迎えている。
眠れ、痛みと共に。咲け、死の薔薇よ……血に染まりて、闇に微笑め。
《ブラックロザリア!!》」
次の瞬間、無数の黒いバラが空中に咲き乱れた。
「なっ……!?」
スカルライダーのバイクが失速。バラの棘が空間を突き破り、彼の胸を貫く!
「グゴアアアアアアアアッ!!!!!」
棘は心臓を穿ち、真っ黒な血を吸って咲き誇る。
バラは、彼の命を吸い尽くし、妖しく笑ったように――散った。
スカルライダー、即死。
バイク《バンシーヘル》も主と共に崩れ落ち、黒煙を上げて爆発した。
「じゃ〜ん♡ ギャルのラストショー、始めちゃうよん♡
乱れ咲け、イージスの花――!」
ライラの弓に、七色の矢が次々と生成される。
花びらのように舞うそれらが、空を翔けるミサイルマンを囲む!
「撃ち抜けッ!乱れ百花繚乱撃ち!!!」
数十本の矢が一斉に飛び出し、ミサイルマンの胴体とミサイルポッドに命中!
爆発! 爆発!! 爆発!!!
「ガァァ……オオ……ッ……」
ミサイルマンの身体が空中で何度も破裂し、最後は自爆装置ごと破裂した。
爆煙の中、ガラクタとなった機体が真下の谷へと墜落していく。
「主の御名において裁きを――
神よ、偽りの魂に鉄槌を!
《神聖なる審判――セイクリッド・ジャッジメント》!!」
空が裂けた。
雲を突き破って現れた巨大な十字架が、金色に輝きながら落下する。
「ドォォオオオン!!!!」
まさに天罰。
光が骸骨たちを貫き、無数の爆発が起きる。
スカルライダーの残骸に止めを刺すように、十字の光が最後に炸裂!
「神の審判、終了です。」
シスターマリアが祈りを終えたとき、戦場に立っていたのは俺たちだけだった。
マーリンの黒薔薇、ライラの百花繚乱、マリアの神の天罰が完璧に決まり、悪魔王ガイアスの最凶の刺客たちを撃退した。
【パーティ全員のレベルが2上がった!】
フラちゃんがデコトラの運転席から振り返り、親指を立てて言った。
「エンジンかけてもイイヨー!」
魔導デコトラ《デッドエンド煌号》、再び爆走開始!俺たちは爆走して街をでた。




