第7話 砂漠の決戦、 死神の笑顔
砂漠の中心、敵幹部の巨大拠点。黒い塔が不気味にそびえ、地響きのような魔導エンジンの音が鳴っていた。塔の内部に突入したアイゼンハワード、ルアーナ、リュカの三人は、早くも敵の魔導兵器に追い回されていた。
ルアーナ「ちょ、ちょっと!なんで爆発する床ばっかりなのよ!?」
リュカ「走るしかない…!あ、アイゼンさん、後ろ!」
アイゼン「やれやれ。老人を走らせるとは、趣味の悪い敵だな!」
背後から轟音と共に迫る魔導タンク。
タンクの魔導砲口が光る。
アイゼン「ルアーナ、あのスイッチを押せ!」
「どれ!?3つあるじゃない!赤・青・…なぜかピンク!?」
アイゼン「ピンクだ。絶対にピンクだ。俺の“勘”がそう言ってる!」
ルアーナが勢いで押すと
魔導タンクは急停止して前転し、
巨大な金属塊が ドシャーン! と敵兵にまとめて倒れ込んだ。
リュカ「すごい…!アイゼンさん、本当に分かったんですか?」
アイゼン「もちろん。…まあ、外れたら死んでたがな。」
突如、塔の天井から黒い影が降りてきた。
死神レイヴ。
冷たい笑顔で、まるで敵の首領のように立ちはだかる。
レイヴ「やあ、みんな。まだ生きてたんだ?」
ルアーナ「その言い方やめろォォ!!」
リュカ「……でも、なんか…嬉しそう。」
死神レイヴは手をかざし、敵の魔導兵器を起動させる。
壁から無数の魔導レーザーが伸びる。
アイゼン「ほう、俺たちを殺す気か?」
レイヴ(ニタァ)「さあね……逃げられるもんなら逃げてみな?」
まるで犯人と警察との追いかけっこのような、
爆笑ギャグ追跡劇が塔の内部で繰り広げられた。
三人が迫るレーザーをスレスレで避けながら飛び回ると、レイヴはさらに悪ノリ。
レイヴ「こっちこっち〜!ほらほら、アイゼンじいちゃん、足もつれるよ?」
アイゼン「ふん、誰がじいちゃんだ!戦後すぐに生まれた程度だぞ!」
ルアーナ「それもう70年くらい前じゃない…?」
レイヴが突然、空中で静止し、背中を向けたままこう言う。
レイヴ「ねぇ、アイゼン。
俺が本当に裏切ったら…どうする?」
静寂。
砂の風さえ止まったように見えた。
しかしアイゼンは口角を上げた。
アイゼン「簡単だ。お前の首をひねってでも連れ戻すだけさ。」
ルアーナ「はぁ!?」
リュカ(微笑)「…信じてるってことだよ。」
レイヴは、ほんの一瞬だけ目を伏せ――
次の瞬間、くすっと笑った。
レイヴ「そう、それでいい。
俺は“敵のふりをして全部引き寄せてるだけ”だから。」
三人「…………は?」
そのとき塔全体が震えた。
床の魔法陣が赤く光り、巨大な魔導構造体が唸りをあげる。
ルアーナ「まずい!敵幹部が最終兵器を起動したのよ!」
リュカ「アイゼンさん…どうすれば…?」
レイヴ「あー、これは俺でも止めらんないよ。ごめん☆」
アイゼンは一瞬で状況を見抜くと、杖を床に突き刺した。
アイゼン「全員伏せろ!
魔導陣の流れを逆転させてやる!」
砂煙が爆発し、赤い光が逆巻き、
塔の上部がドゴォォン!と吹き飛ぶ。
レイヴが呆然とする中、
アイゼンは砂埃まみれで立ち上がり、息を切らしながら宣言した。
アイゼン「ふぅ…。
老人を怒らせると、世界が一つくらい吹っ飛ぶんだよ。」
レイヴ「……ねぇ、ほんとに死神より死神してない?」
塔の崩壊を背に、
四人はようやく同じ方向を見つめて歩き出した。
レイヴがぽつり。
レイヴ「……ったく。
仲間ってのは、手がかかるねぇ。」
リュカは微笑んだ。
ルアーナは怒りながら拳を振り上げ、
アイゼンは皮肉まじりに肩をすくめた。
アイゼン「お前が一番手がかかるんだよ、死神。」
砂漠の風が吹き抜け、
四人の影は長く、ひとつの方向に伸びていた。




