第4話 逃走犯と魔導レンタルカー
俺たちは魔界の門近くの魔界村「デトロイトメタルシティ」へと逃げてきた。
魔界村の空中には悪魔王ガイアスが旋回している。
見つかれば、俺たちは即殺されるだろう。
そんな中、イーリス族のライラのお友達である「魔界バー《死霊の館》」のマスター・フランケンシュタインさんに、俺たちはかくまってもらった。見た目はゴリラみたいな体格で完全に化け物のホラー系だが、話すとめちゃくちゃいい人だ。
「なにぃいいい! 魔界指名手配犯の勇者をかくまってほしいだとぉおおおお!」
フランケンシュタインの咆哮が店内に響いた。
「フラちゃん、いいでしょう♡」
と、ライラが上目遣いでウィンクを飛ばす。
「できませんって言いたいけど……イイヨー!」
巨大な手でグーサインをくれた。
「あと、逃走するのに車貸してくれない?」
「なんだと! 魔界法に触れるぞ! 指名手配犯の逃走幇助罪で俺は終身刑だぁあああ!」
「フラちゃん、お願い♡」
「できませんって言いたいけど……イイヨー!」
またグーサイン。
「ライラ、運転できないから、フラちゃんが運転してくれない?」
「この店を誰かにまかせなきゃいけないじゃないか! その人件費や売り上げの保証はどうするんだ!」
「フラちゃん、お願いね♡」
「できませんって言いたいけど……イイヨー!」
親指を立てながら、何故か嬉しそうなマスター。
「今日はここでお泊まりねぇ♡」
「……そのセリフは俺が言うべきじゃないのか!? まあ、できませんって言いたいけど……イイヨー!」
「なにこの人、甘えられるとなんでもOKしてくれる……」
と俺がボソッと呟くと、
「ライラはイーリス族の末っ子。しかも自他ともに認める甘え上手だ」
とマーリンが腕を組んで言った。
「……っていうか、全部ライラのお願い通ってない?」
とシスターマリアがぽつり。
「そのうえお願いは、全部、俺たちのために使ってるっていうね」
とアルベルトが苦笑する。
「ごめんね~☆でもギャルって、かわいさが正義だから♡」
とライラはピースサイン。
俺たちは複雑な気持ちを抱えつつも、フラちゃんの心優しさに感謝しながら、魔導レンタルカーでの逃走計画を練るのだった。