第4話 偽りの同盟 、 死神のゲーム
砂漠の都市
夜の帳が降りると、砂漠に沈むはずの影が、なぜか“浮かび上がる”奇妙な街。
そんな街に、
一人の初老の魔導捜査官と、科学少女と、元囚人の少年が
こっそりと、しれっと、忍び込んだ。
目的はひとつ。
――裏切ったはずの“死神レイヴ”の行方を追うため。
だが、この夜。
彼らを待っていたのは、友情を試す死神のゲームだった。
イヒヒヒヒ――と、どこかで笑う影。
闇に紛れ、死神は踊り、仲間は翻弄される。
さてさて、この危険で愉快なゲーム、
生き残れるのは誰だ?
砂漠都市カラ・ドームの最深部。
巨大な岩をくり抜いた地下には、敵組織《サンドロア同盟》の秘密会議場が存在した。
アイゼンハワードは、石壁に背中を預けながらニヤリと笑う。
「ここか。まったく趣味の悪い連中だ」
ルアーナは通信機を調整しながら、眉間にしわを寄せる。
「だから言ったでしょ?真正面から入るなんて無茶!」
「お前の科学があれば何とかなるだろう」
「その理屈やめて!」
リュカは石の扉を見つめて、ぽつり。
「……レイヴ、ここにいる」
アイゼン「ほう。根拠は?」
リュカ「……わかる。ただ、あの人、ちょっとだけ怒ってる気がする」
ルアーナ「むしろ楽しんでるんじゃないの?」
アイゼン「どっちでも厄介だ」
そう言った瞬間、ゴゴゴッと扉が勝手に開いた。
内部から響くのは、低い声。
「入れ。客人だと聞いている」
アイゼンは顎を鳴らす。
「……やれやれ、歓迎されちまったか」
会議場の中央には、
仮面をつけた敵幹部たち。
そしてその前に――
「おやおや〜?来ちゃいましたぁ?」
死神レイヴ、敵側に立って登場。
その顔には妙に爽やかな笑顔。
しかし目の奥だけは、悪戯っぽく光っている。
ルアーナ「裏切ったって、そういう……?」
アイゼンは肩をすくめる。
「フン。裏切るようなタマじゃない」
レイヴは足を組み、威張ったように言った。
「さぁてアイゼンハワード。死ぬ準備はいいかい?イヒヒヒヒ」
ルアーナ「脅すなーっ!!」
幹部たちはレイヴの言葉を鵜呑みにし、
「お前が味方すれば百人力だ」
「奴らを始末しろ」と盛り上がる。
しかしアイゼンの目に映るのは別のもの――
レイヴの手が、意味ありげに“3回”テーブルを叩く。
それを幹部は気づかない。
しかしリュカは気づいた。
リュカ「……合図だ」
アイゼン「ほぉ、やっぱりか」
ルアーナ「ちょ、なんでわかるの!?」
リュカ「レイヴ、緊張してるときだけあの癖出る」
ルアーナ「緊張!?あの死神が!?嘘でしょ」
アイゼン「つまり、レイヴは敵を騙している。だが……」
アイゼンはわざと敵の方を向いて叫ぶ。
「裏切り者は歓迎だぜ。ただし――
俺を殺すには、十回は来い」
レイヴは楽しそうに笑った。
「じゃあ……第一問だアイゼンさん。
あなたを殺す方法、ボクがひとつ持ってる。
さて――何でしょう?」
幹部たち「おお、心理戦か!」
ルアーナ(こいつ……完全に遊んでる!)
死神レイヴは笑顔のまま、指を鳴らす。
「ヒントは“友情”だよ〜?」
アイゼン「……友情を殺す?それとも利用するか……」
ルアーナ「そんな危険なゲームやめなさいよ!」
リュカは静かにレイヴを見ていた。そして――
リュカ「……レイヴ、右手……震えてる」
レイヴの表情が一瞬だけ固まる。
少年の言葉は、死神の心を貫いた。
「…………はぁ。勘が鋭いねぇ、リュカは」
しかし次の瞬間、レイヴは敵に聞こえるように声を張り上げた。
「アイゼンハワードを殺す方法は……
“仲間を疑わせること”だよ!!」
敵幹部「なるほど!」
ルアーナ「うわああああややこしくするなぁあああ!」
アイゼンは鼻で笑う。
「残念だな。仲間は疑わねぇよ」
レイヴはにやり。
「フフ……それを聞きたかった」
その言葉の裏に、明確な“信頼”の音がした。
死神レイヴは突然、敵幹部の椅子を蹴り飛ばした。
幹部「な、なにを――」
レイヴ「アイゼンが疑わないって確信したからさぁ?」
そして、
レイヴの背後に影が立つアイゼン、ルアーナ、リュカ。
レイヴ「さて敵さん。ゲームオーバーだよ?」
アイゼン「悪いが、お前らの会議……締めの時間だ」
ルアーナ「まったく!心臓に悪い!」
リュカ「レイヴ……怒ってたの?」
レイヴは顔をそむけた。
「べ、別に?ちょっと……寂しかっただけだよ」
アイゼン「……可愛いとこあるじゃねぇか」
レイヴ「言うな!」
照れる死神に、仲間3人は笑った。
こうして、
偽りの同盟は、友情の証明へと変わった。




